今般、四半期開示制度が大幅に見直されました。2024年4月1日以降に開始する四半期から、四半期報告書が廃止されます。
現時点での留意事項をこちらにまとめておきます。
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四半期開示制度の見直しの背景
上場会社は金融商品取引法に基づき、決算期末につき有価証券報告書、それ以外の四半期末につき四半期報告書の作成が義務付けられていました。
しかし、四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信との間で内容が重複しており、存在意義について疑問視する声が多く挙がっていました。
改正金商法の成立
2023年11月20日に成立した改正金融商品取引法により、四半期報告書と四半期決算短信が一本化されました。
これにより同法の施行日である2024年4月1日以降、四半期報告書の作成は不要となります。
改正金商法施行後の開示スケジュール
2024年4月1日以降、上場会社の開示スケジュールは以下の通りとなります。
・年度末の有価証券報告書に加え、第2四半期末における半期報告書の作成が必要となります。
・有価証券報告書は期末日後3ヶ月以内、半期報告書は45日以内の公表が求められます。
・有価証券報告書は監査法人による監査を、半期報告書はレビューを受ける必要があります。
四半期決算短信
四半期報告書の廃止に伴い、四半期決算短信の位置付けにも以下の変更がありました。
東京証券取引所の「四半期開示の見直しに関する実務の方針」が公表され、四半期決算短信についてレビュー制度が設けられました。
レビューを受けるのは原則として任意ですが、レビューの有無を注記事項に記載する必要があります。
また、直近の有価証券報告書等において無限定適正意見(結論)以外の場合など、レビューが義務付けられる場合もあります。
レビューが義務付けられるケース
- 直近の有価証券報告書・半期報告書・四半期決算短信(レビューを行う場合)において、無限定適正意見(結論)以外の場合
- 直近の内部統制監査報告書におけて、無限定適正意見以外の場合
- 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合
- 直近の有価証券報告書・半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合
- 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合
JICPAのレビュー基準
2024年3月28日、JICPA(日本公認会計士協会)が、期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」及び期中レビュー基準報告書第2号「独立監査人が実施する期中財務情報に対するレビュー」を公表しました。
前者は金融商品取引法に基づく半期報告書のレビューに、後者は四半期決算短信のレビュー等に適用され、監査人は今後、これらの基準に準拠してレビューを行うこととなります。なお、両者は根拠となる法令や強制/任意の異なる別の制度ですが、レビューにおける保証水準が異なるわけではありません(限定的保証)。
四半期決算短信における注記事項
四半期決算短信において必須となる注記事項は以下の通りです。これ以外の注記(重要な後発事象等)は省略可能とされています。
- 会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示に関する注記
- 四半期特有の会計処理に関する注記
- セグメント情報等の注記
- 株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
- 継続企業の前提に関する注記
- キャッシュ・フロー計算書に関する注記(キャッシュ・フロー計算書の開示を省略する場合)
二段階開示
任意レビューの場合、二段階開示が認められています。これは、レビュー完了前の決算短信を一度開示し、レビュー完了後に、レビュー報告書を添付した決算短信を再度開示するものです。
会計基準等の変更
会計基準
四半期開示制度の改正にあわせて、企業会計基準委員会から企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」が公表されました。2024年4月1日以降に作成される半期報告書は同基準及び適用指針に準拠することが求められます。
財務諸表等規則
財務諸表の作成基準についても変更がありました。従来、四半期財務諸表については四半期財務諸表等規則、中間財務諸表については中間財務諸表等規則が作成基準を定めていましたが、これらは廃止され、財務諸表等規則(及び連結財務諸表等規則)に統一されます。
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* 2024.3.28 : 中間財務諸表に関する会計基準及び四半期レビュー基準の公表について追記しました。