ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年9月2日

公開買付制度と大量保有報告制度の見直し

目次

公開買付制度と大量保有報告制度を見直す改正金融商品取引法について、施行に必要な政令・内閣府令が2025年7月4日に公布されました。施行日は2026年5月1日です。

改正の内容自体は、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第32号、2024年5月22日公布)で定められていましたが、今回の政令・内閣府令により細目と施行日が固まりました。上場会社の株式を取得する側にとっても、保有状況を報告する側にとっても、実務の前提が変わります。

公開買付制度の見直し

改正法による変更の中心は次の2点です。

  • 公開買付けが義務付けられる基準が、株券等所有割合の3分の1超から30%超に引き下げられる
  • 市場内取引のうち立会内の取引が、新たに公開買付規制の対象に加えられる

改正前のいわゆる3分の1ルールでは、市場外取引や市場内の立会外取引によって株券等所有割合が3分の1を超える場合に公開買付けが必要とされる一方、市場内の立会内取引は原則として規制の対象外でした。改正後の30%ルールでは、原則として取得の方法を問わず、買付け等の後の株券等所有割合が30%を超えるかどうかが基準となります。市場での買い増しによって支配権に近づく取得についても、公開買付けの手続を経ることが求められる場面が生じます。

今回の政令内閣府令では、これに関連して、公開買付けを要しない僅少な買付け等の基準、形式的特別関係者の範囲、公開買付手続の柔軟化、公開買付届出書の記載事項の明確化などが定められています。

このうち僅少な買付け等については、その買付け等により増加する株券等所有割合が0.5%未満であることに加えて、買付け等を行う日前6か月間に当該発行者の株券等の買付け等を行っていないことが要件とされました(令第7条第3項)。単に1回あたりの取得を0.5%未満に抑えれば足りるわけではありません。

大量保有報告制度の見直し

大量保有報告制度についても、改正法と今回の政令・内閣府令により内容が確定しています。2026年5月1日以後は、次の取扱いによることになります。

  • 保有割合を合算すべき共同保有者の要件が具体化される
  • みなし共同保有者について、会社とその代表者等との関係など、対象となる関係が見直される
  • 現金決済型のエクイティ・デリバティブ取引について、一定の目的を有する場合を報告義務の対象とする規定が整備される
  • 報告書の記載事項が明確化される

共同保有者の要件は、次のように変わります。株主どうしが議決権行使について話し合っただけであれば共同保有者には当たりませんが、共同して議決権を行使することを合意した場合には、その時点で共同保有者となるのが原則です。改正後は、この原則に例外が設けられ、次の3つをすべて満たす場合には共同保有者に該当しないこととされました(法第27条の23第5項)。

  • 第一種金融商品取引業または投資運用業を行う金融商品取引業者、銀行等であること
  • 共同して重要提案行為等を行うことを目的としないこと
  • 個別の権利の行使ごとの合意であること

これらの要件を満たす金融商品取引業者や銀行等が、重要提案行為等を目的とせず、個別の議案について共同して議決権を行使する場合には、その合意を理由として保有割合を合算する必要はないことになります。投資家どうしが協働して発行会社と対話を行う際の支障を取り除く趣旨といえます。

もっとも、この例外に当てはまるかどうかは「重要提案行為等」の範囲に左右されます。この点は、発行者またはその子会社に対する「提案」行為であること、政令が掲げる事項に該当すること、事業活動に重大な変更を加え、または重大な影響を及ぼすことを目的とすることの3要件で判断されます。今回あわせて改正された株券等の大量保有報告に関するQ&Aでは、経営方針等の説明を求めるにとどまる行為は「提案」に当たらないとするなど、具体的な行為ごとの考え方が示されています。

現金決済型のデリバティブ取引についても、ロングポジションを有すれば当然に保有者となるわけではありません。原資産である株券等を取引の相手方から取得する目的、ポジションを示して発行者に重要提案行為等を行う目的、相手方が有する議決権の行使に影響を及ぼす目的のいずれかを有する場合に、保有者として扱われます(法第27条の23第3項第3号)。

実務への影響

株式を取得する側では、取得計画の立て方に影響が及びます。市場内で段階的に買い増す手法を前提としていた場合、30%という水準との関係で、どの段階で公開買付けが必要になるかをあらかじめ検討しておく必要があります。基準が3分の1超から30%超に下がることで、公開買付けを要する場面は従来より早い段階で訪れます。

株式を保有する側では、共同保有者の判定と報告体制の確認が課題になります。他の株主との協働や、デリバティブを用いた持分の設計がある場合には、改正後の規定に照らして報告義務の有無を点検しておくことになります。

施行は2026年5月1日で、まだ時間があります。もっとも、取得や保有の計画は施行日をまたいで進むことがあるため、施行日前後の取扱いを含めて、早い段階で整理しておくことが望まれます。

参考資料

今回の公布にあわせて、金融庁はガイドラインとQ&Aの改正版も公表しています。実務上の判断にあたっては、条文とあわせてこれらを確認することになります。

パブリックコメントに対する金融庁の考え方も、公開買付制度関連大量保有報告制度等関連に分けて公表されています。個別の場面で規定の趣旨を確認する際の手がかりになります。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、M&A支援において、スキームの検討から契約の作成・レビューまでに対応しています。取得の方法や時期の設計にあたって規制上の制約を整理することも、あわせて扱います(法務コンサルティング)。

制度の適用関係について個別に見解を示す必要がある場合には、法律意見書の作成にも対応しています。

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