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令和6年分の路線価等が、7月1日に国税庁ホームページで公開されました。土地の「公的な価格」には、路線価のほかにも公示地価・基準地価・固定資産税評価額があり、評価の主体・目的・時点がそれぞれ異なります。同じ土地に複数の公的な価格が併存するため、どの場面でどの価格を使うのかを混同しやすいところです。
本記事では、4つの公的な価格の違いを整理した上で、相続税・贈与税の申告における路線価の使い方と留意点を解説します。
参考記事: 令和6年地価公示の結果(2024年3月26日)
4つの公的な価格
| 種類 | 決定者 | 評価時点 | 公表・更新 | 水準の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| 公示地価 | 土地鑑定委員会 | 1月1日 | 3月下旬 | (基準) | 取引の指標 |
| 基準地価 | 都道府県知事 | 7月1日 | 9月下旬 | 公示地価と同水準 | 取引の指標 |
| 路線価 | 国税局長 | 1月1日 | 7月上旬 | 8割程度 | 相続税・贈与税 |
| 固定資産税評価額 | 市町村長 | 基準年度の前年1月1日 | 3年ごと評価替え | 7割程度 | 固定資産税等 |
4つの価格は決定者こそ異なりますが、いずれも不動産鑑定士による鑑定評価を基礎資料とし、地価公示価格を軸に水準を連動させる設計になっています。その上で、公示地価・基準地価が標準地・基準地の正常な価格を示すのに対し、路線価と固定資産税評価額は、課税のために意図的に低い水準で設定される評価基準であり、時価そのものではありません。
公示地価と基準地価
公示地価は、地価公示法に基づき国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公示する標準地の正常な価格で、一般の土地取引の指標や公共用地の取得価格の算定基準となる、公的な価格の基準です。標準地ごとに2人以上の不動産鑑定士が独立に鑑定評価を行い、その結果を土地鑑定委員会が審査・調整して価格を判定します(地価公示法第2条)。
基準地価(都道府県地価調査)は、国土利用計画法に基づき都道府県が公表する基準地の価格です。基準地ごとに1人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、都道府県知事が審査・調整して判定します(国土利用計画法施行令第9条)。評価時点が7月1日と公示地価から半年ずれているため、年の途中の地価動向を把握する資料として使われます。
いずれも地点ごとの価格を国土交通省の不動産情報ライブラリで検索できます(不動産情報ライブラリの公開参照)。制度の詳細は、冒頭の参考記事で紹介しています。
路線価
路線価は、相続税・贈与税における土地の評価のために国税庁が毎年定める価格です。売買実例価額、公示価格、国税局長の委嘱により不動産鑑定士等が鑑定評価した価額、精通者意見価格等を基として、国税局長が路線ごとに評定します(財産評価基本通達14)。評価時点は公示地価と同じ1月1日で、「地価公示価格等を基にした価格の80%程度」が目途とされ、毎年7月に国税庁の財産評価基準書サイトで公開されます。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、総務大臣が定める固定資産評価基準に基づき、市町村長(東京23区は都知事)が決定します。市街地では、主要な街路に接する標準宅地について不動産鑑定士の鑑定評価等を活用して適正な時価を求め、これを基に街路ごとの固定資産税路線価を付設した上で、個々の土地の形状等に応じた画地計算を適用して各筆の評価額を求めます。
評価替えは3年ごとで、令和6年度はその評価替えの年度に当たります。価格は基準年度の前年の1月1日を価格調査基準日として決定されるため(令和6年度評価替えでは令和5年1月1日)、他の3つの価格より時点が1年古くなります。固定資産税・都市計画税のほか、原則として不動産取得税や登録免許税の算定基礎にも使われるため、土地を保有・取得するコストに直結する価格です。個々の土地の評価額は市町村から送付される課税明細書等で確認するのが基本ですが、固定資産税路線価は全国地価マップ(一般財団法人資産評価システム研究センター)で閲覧できます。
8割・7割の水準の根拠
8割・7割という水準の根拠は、それぞれ性質が異なります。出発点は、平成元年制定の土地基本法第17条が、国は「公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする」と定めていることです。路線価の8割は、これを受けて平成4年分から採用されている国税庁の運用上の目安で、法令や告示に明文の定めはなく、毎年の公表資料に「路線価等は、1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めています」と示されているにとどまります(令和6年分の路線価等の公開)。
一方、固定資産税の7割には告示上の明文があります。総務大臣の告示である固定資産評価基準は、第1章第12節(経過措置)で次のように定めており、平成6年度の評価替えから適用されています。
宅地の評価において、(中略)標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法(昭和44年法律第49号)による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の7割を目途として評定するものとする。
出典: 固定資産評価基準第1章第12節一
「経過措置」として置かれた定めが30年にわたり維持されている点も、この水準の性格を示しています。各評価の実施機関・価格時点・水準の対応関係は、国土交通省の主な公的土地評価一覧にまとめられています。
相続税・贈与税における路線価の使い方
路線価方式と倍率方式
相続税・贈与税の申告における土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります(国税庁タックスアンサーNo.4602)。
路線価方式は、路線価が定められている市街地的な地域(路線価地域)の評価方法です。路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額で、路線価図に千円単位で表示されています。評価にあたっては、正面路線価に奥行価格補正率などの補正を行い、角地では側方路線価に奥行価格補正率と側方路線影響加算率を乗じて算定した額を加算するなど、土地の形状や接道状況に応じた調整をした上で、地積を乗じて評価額を計算します(国税庁タックスアンサーNo.4604)。間口が狭い、奥行きが長い、形が不整形といった事情も、それぞれ所定の補正率を通じて評価額に反映されます。
倍率方式は、路線価が定められていない地域(倍率地域)の評価方法で、その土地の固定資産税評価額に、地域ごとに定められた評価倍率を乗じて評価額を計算します。路線価図・評価倍率表は、いずれも国税庁の財産評価基準書のサイトで確認できます。
また、路線価図には借地権割合も表示されており、借地権や貸宅地・貸家建付地など、賃貸借等の権利関係がある土地の評価に用いられます。次の図で赤丸を付した「215D」は、1平方メートル当たりの路線価が215,000円で、借地権割合が60%(記号D)であることを示します。

適用される年分
路線価は1月1日時点の価額水準で定められ、その年の1月1日から12月31日までの間に相続・遺贈・贈与により取得した土地の評価に適用されます。公表が7月のため、年の前半に相続が開始した場合には、その時点ではまだ適用すべき路線価が公表されていないことになりますが、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内であり、通常は公表を待って申告の準備を進めることになります。
実勢価格との関係と留意点
路線価の「公示価格等の8割程度」という水準は、制度全体としての目安であり、個々の土地の実勢価格との比率を保証するものではありません。地価の変動が大きい地域や個別性の強い土地では、路線価に基づく評価額と実際の取引価格の乖離が大きくなることがあります。取引や遺産分割の場面で土地の時価を把握する必要がある場合には、路線価を機械的に0.8で割り戻すのではなく、公示地価・基準地価や周辺の取引事例、必要に応じて不動産鑑定評価を参照することが考えられます。
分譲マンションについては、この乖離への対応として評価方法が改正されています。令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した居住用の区分所有財産は、従来の評価方法による価額に、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素から算定した評価乖離率に基づく区分所有補正率を乗じて評価する場合があります(令和5年9月28日付課評2-74「居住用の区分所有財産の評価について」。概要は国税庁タックスアンサーNo.4667)。総階数が2以下の建物や事業用のテナント物件など、通達の適用対象外となるものもあります。タワーマンションを中心に、通達評価額が市場価格を大きく下回る状態を利用した相続税対策が広がったことを受けたもので、路線価等による評価と実勢価格の乖離が課税上の論点となった例といえます。
また、通達評価額と実勢価格の乖離が大きいことや、借入れを利用して不動産を取得したことだけで、直ちに通達による評価が否定されるわけではありません。もっとも、財産評価基本通達の総則6項は、通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産は国税庁長官の指示を受けて評価する旨を定めており、最高裁令和4年4月19日判決(判決全文)は、通達による画一的な評価がかえって実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、通達評価額を上回る価額による課税も平等原則に反しないと判断しています。同判決は、相続税の負担軽減を意図・期待して借入れによる不動産取得を実行した事案で、鑑定評価額に基づく課税を適法と認めたものであり、乖離を利用した税負担の軽減策にはこの観点からのリスクがあります。
ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス
当事務所では、税務顧問・申告において、相続税・贈与税の申告に伴う土地の評価に対応しています。不動産鑑定士として評価実務を扱ってきた経験から、路線価等の公的な価格と実勢価格の関係を踏まえた検討を行います。遺産分割や土地の賃貸借に関する法律問題も事務所内で扱うため、窓口を分けずにご相談いただけます(法務コンサルティング)。
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