ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年2月17日 更新: 2026年4月7日

令和8年度税制改正大綱の実務ポイント

目次

令和8年度税制改正の大綱が2025年12月26日に閣議決定されました。本記事では、企業の実務に影響する項目を絞って整理します。内容は財務省の令和8年度税制改正の大綱の概要によります。大綱の段階であり、改正法案の内容は今後の審議によります。

課税最低限178万円と見直しの仕組み

前年度に続いて、いわゆる「年収の壁」への対応が入りました。ただし今回は、物価上昇を踏まえて基礎控除等を適時に見直す仕組みそのものを設ける点が前年度と異なります。大綱は、基礎控除の本則部分について、見直し前の控除額に税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗じて調整するという考え方を示しています。給与所得控除の最低保障額も同様です。

  • 基礎控除は、合計所得金額2,350万円以下の個人について控除額を4万円引上げ
  • 給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円へ
  • これに特例の上乗せを加え、所得税の課税最低限を178万円まで先取りして引き上げ

178万円という数字は、給与所得控除74万円と基礎控除104万円の合計です。それぞれ本則に特例が上乗せされた金額で、特例部分は年分によって額が変わります

基礎控除の加算額は、令和8年分と令和9年分については合計所得金額489万円以下で42万円、489万円超で5万円です。令和10年分以後は、合計所得金額132万円以下で37万円となります。給与所得控除についても、最低保障額を5万円引き上げる特例が所得税では令和8年分と令和9年分、個人住民税では令和9年度分と令和10年度分に設けられます。

大綱自身が「178万円まで特例的に先取りして引き上げる」と表現しているとおり、この水準は特例の上乗せによって前倒しで実現されたものです。42万円と5万円という加算額は令和8年分と令和9年分に限られます。

実務で押さえておきたいのが適用時期です。改正は令和8年分以後の所得税について適用されますが、給与等の源泉徴収については令和9年1月1日以後に支払うべき給与等からとされています。大綱も、源泉徴収義務者の事務負担に配慮し、見直しの初年は月次の源泉徴収では対応せず年末調整から対応するとしています。月次の天引きは当面変わらず、年末調整で精算する形です。

賃上げ促進税制の見直し

法人課税で影響が大きいのは、賃上げ促進税制の見直しです。制度全体がなくなるわけではなく、廃止の対象は次のとおりです。

  • 大企業向け措置は、令和8年3月31日をもって廃止
  • 中堅企業向け措置は、適用要件・税額控除率を見直したうえで、適用期限である令和9年3月31日をもって廃止
  • 教育訓練費に係る上乗せ措置は廃止

法人事業税の付加価値割において雇用者給与等支給額の増加額を付加価値額から控除する措置についても、賃上げ促進税制の見直しに合わせて適用対象から大企業が除外され、適用要件が見直されます。

賃上げ促進税制を前提に税負担を見積もっている場合、翌期以降の試算をやり直す必要があります。適用期限が期をまたぐため、決算期によって影響が生じる時期が変わります。

一方、大胆な設備投資の促進として「特定生産性向上設備等」(仮称)が創設されます。投資計画における取得価額の合計が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)で、年平均の投資利益率が15%以上見込まれることなどについて経済産業大臣の確認を受けた設備が対象で、即時償却か税額控除(取得価額の7%、建物・建物附属設備・構築物は4%)を選択できます。

インボイス制度の経過措置

免税事業者からの仕入れに係る経過措置について、最終的な適用期限が2年延長され、控除割合の引下げペースが緩和されます。

  • 令和8年10月から7割
  • 令和10年10月から5割
  • 令和12年10月から令和13年9月末までは3割

あわせて、一の免税事業者ごとの年間適用上限仕入額が10億円から1億円に引き下げられます。上限を超える部分には経過措置を適用できません。また、いわゆる2割特例の終了後についても、一定の個人事業者について、納税額を売上税額の3割とすることができる措置が令和9年分と令和10年分の2年に限って設けられます。

令和8年10月に控除割合が変わる点は、施行が近いこともあり、仕入税額控除の計算と会計システムの設定に影響します。免税事業者との取引がある場合は、時期を確認しておく必要があります。

防衛特別所得税の創設

防衛力強化の財源確保として、基準所得税額に1%の税率を乗じた防衛特別所得税が創設されます。課税期間は令和9年以後の当分の間です。

あわせて、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられ、その課税期間が令和19年までから令和29年までへ10年間延長されます。

両者は併存します。 復興特別所得税が防衛特別所得税に置き換わるのではなく、令和9年分以後は防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%が並び、所得税に対する付加税率の合計は従来と同じ2.1%です。

源泉徴収の実務としては、合計の税率が変わらないため、税額計算の基本的な考え方は変わりません。もっとも、令和9年分以後の源泉徴収税額表への差替えや、システム上の税目の表示については確認が要ります。なお前年度改正の防衛特別法人税と名称が似ていますが、こちらは所得税の付加税で、対象も時期も異なります。

そのほか確認しておきたいもの

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は、適用期限である令和8年3月31日をもって延長されません。利用を検討している場合、期限までの対応になります。

極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置も見直されます。追加の税負担を計算する基礎となる基準所得金額から控除する特別控除額が3億3,000万円から1億6,500万円に引き下げられ、税率が22.5%から30%に引き上げられます。

※本記事は大綱の内容を整理したものです。改正法案の内容や適用関係は今後変わる可能性があるため、実際の検討では成立した法令をご確認ください。

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当事務所では、税務顧問・申告において、法人税・消費税の申告のほか、改正内容を踏まえた影響の試算や社内対応の整理に対応しています。判断が分かれる論点について見解を示す必要がある場合は、税務意見書の作成を扱っています。

2026.4.7 追記: 大綱の内容を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)が2026年3月31日に成立し、同日公布されました。原則として2026年4月1日から施行されています。

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