ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年4月15日

定款の目的と事業の追加

目次

新しい事業を始めるとき、その事業が定款の目的に入っているかどうかの確認は、後回しにされがちです。設立のときに作った定款をそのまま使っている会社では、実際の事業と目的の記載が離れていることも珍しくありません。取引や許認可の場面で目的を示す必要が生じて、はじめて気づくという順序になります。

参考記事: 事業会社における子会社設立の際の留意点(2024年10月10日)

本稿では、新規事業を始めるときに定款の目的を確認すべき場面と、目的を追加する場合の手続と段取りを整理します。

定款と登記における目的

株式会社の定款には、目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所を記載しなければなりません(会社法27条)。目的はその筆頭に置かれた絶対的記載事項で、これを欠く定款は効力を生じません。

同時に、目的は登記事項でもあります。会社法911条3項は設立の登記において登記すべき事項を列挙しており、その1号が目的です。商号(2号)や本店(3号)と並んで、誰でも登記事項証明書で確認できる情報として公示されます。

定款の記載と登記の両方に現れるという点が、実務上の扱いを決めています。社内の書類にとどまらず、対外的に会社が何をする会社なのかを示す情報になっているためです。

目的の確認が必要になる場面

会社は、定款で定められた目的の範囲内で権利を有し、義務を負います(民法34条)。実務で目的の確認が必要になる場面は、主に次の3つです。

  • 許認可や登録の要件として、定款の目的に当該事業の記載があることが求められる
  • 取引先や金融機関が、登記事項証明書で事業の内容を確認する
  • 入札や補助金の申請で、事業の実施体制を示す資料として提出を求められる

実務上、特に確認が必要なのは許認可です。建設業、宅地建物取引業、労働者派遣事業、古物商、各種の金融関連業など、登録や免許を要する事業では、定款や登記事項証明書の目的欄に、申請する事業に対応する記載があるかを確認されることがあります。必要な記載や変更を求められる時期は制度や申請先によって異なるため、申請要領や窓口で事前に確認します。新規事業の立ち上げでは、許認可の申請スケジュールが定款変更のスケジュールを規定することになります。

目的の書き方

目的を広く書けば、将来の事業展開を既存の記載でカバーしやすくなりますが、抽象的にすぎると登記事項証明書を見た相手に事業内容が伝わりません。具体的に書けば伝わりますが、事業の展開によっては目的の追加が必要になります。

許認可の要件として特定の文言が求められる事業については、その文言をそのまま入れておくのが確実です。求められる記載は制度や申請先によって異なるため、目的の案を固める前に確認しておきます。

末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」という条項を置く例も一般的です。ただし、この条項があっても、既存の目的と関連しない事業まで当然に含まれるわけではなく、許認可で個別の記載を求められたときにこれで代替できるとは限りません。

変更の手続

定款の変更は、株主総会の決議によります(会社法466条)。定款の変更は会社法第二編第六章に置かれているため、309条2項11号により特別決議が必要です。原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数で決議します。定足数は定款で3分の1以上まで引き下げることができ、決議要件を加重することもできるため、自社の定款を確認します。定款変更の効力は決議によって生じ、株主総会議事録が変更を証する書面になります。あわせて、変更後の内容を反映した現行定款を整備しておきます。

登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。起算点は変更の効力が生じた日です。通常は決議の日ですが、決議で将来の効力発生日を定めた場合は、その日から数えます。この期間を過ぎても登記自体は受理されますが、登記を怠ったときは100万円以下の過料に処せられることがあります(会社法976条1号)。登録免許税は申請1件につき3万円です。

手続内容
株主総会特別決議で定款を変更(466条、309条2項11号)
変更登記効力発生日から2週間以内(915条1項)
添付書面株主総会議事録、株主リスト、代理申請なら委任状
表1:目的の変更に必要な手続(会社法・商業登記法・商業登記規則をもとに当事務所作成)

実務上の段取り

新規事業の準備と定款変更の順序を誤ると、手戻りが生じます。確認の順は次のようになります。

第一に、その事業に許認可や登録が必要かを調べ、必要であれば、申請先が定款の目的にどのような記載を求めているかを確認します。窓口によって求める文言が異なることがあるため、目的の案を固める前に問い合わせておくのが確実です。

第二に、定款変更の決議をいつ行えるかを確認します。定時株主総会に合わせるか、臨時株主総会を開くかで、スケジュールが数か月単位で変わります。取締役または株主の提案について、当該事項について議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意すれば、決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。

第三に、変更登記の完了までの期間を見込みます。登記が完了して登記事項証明書に新しい目的が反映されるまでには、申請から一定の日数がかかります。許認可の申請に登記事項証明書の添付が必要な場合、この期間が事業開始日を左右します。

既存の目的の棚卸しをあわせて行うのも有効です。設立時のまま長く変更していない会社では、現に行っていない事業が残っていたり、社名や事業の実態と合わなくなっていたりします。変更登記の機会に整理しておけば、次に目的を見られる場面で説明の手間が減ります。

※本稿は記事公開時点の法令に基づく一般的な整理です。許認可の要件として求められる目的の記載や、登記の申請に必要な書面は、事業の内容と申請先によって異なります。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、法務コンサルティングにおいて、新規事業の立ち上げに伴う定款の確認と目的の設計に対応しています。許認可の要件から逆算した文言の検討、既存の目的の棚卸し、株主総会の運営までを、事業開始のスケジュールに合わせて整理します。

定款変更の決議から変更登記までは、続けて扱うことができます(登記申請)。新規事業が業法の規制に触れないかの確認や、規制の適用を事前に照会する制度の利用については、事業の設計とあわせてご相談いただけます(新規事業推進)。

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