ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年6月4日

令和7年改正資金決済法の施行

目次

資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号)が2026年6月1日に施行されました。暗号資産・ステーブルコイン関連では、媒介のみを行う仲介業の創設、信託型ステーブルコインの裏付け資産運用の柔軟化、資産の国内保有命令の導入が、資金移動業関連では、クロスボーダー収納代行への規制適用と破綻時における利用者資金の返還方法の多様化が柱です。

参考記事: 暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告の公表(2026年1月13日)/暗号資産の会計処理と法人税務(2024年5月21日)

資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要(金融庁説明資料)

施行までの経緯

改正法は2025年3月7日に国会へ提出され、同年6月6日に成立、6月13日に公布されました(金融庁の法案説明資料)。施行日は公布から1年を超えない範囲内で政令に委ねられ、2026年6月1日と定められました(経過措置を政令に委任する附則第8条のみ、公布日から施行されています)。

時期事項
2025年3月7日改正法案の国会提出
2025年6月6日改正法の成立(同月13日公布)
2025年12月16日政令・内閣府令案の公表(パブリックコメント)
2026年1月26日告示案の公表(パブリックコメント)
2026年5月22日関係政令の公布、パブリックコメント結果の公表
2026年6月1日施行
表1:施行までの経過(金融庁公表資料をもとに当事務所作成)

下位法令の整備では、62の個人・団体から259件のコメントが提出され、2026年5月22日に関係政令の公布とパブリックコメントの結果の公表に至っています。仲介業者に関する内閣府令や仲介業者向けの事務ガイドラインの新設を含め、制度の詳細(規制の適用除外の範囲、裏付け資産の運用条件、登録審査の視点等)は政令・内閣府令・告示・ガイドラインに落ちているため、該当しうる事業者はパブリックコメントの回答とあわせて確認する必要があります。

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の創設

これまで、暗号資産の売買・交換の媒介のみを行う場合であっても、暗号資産交換業(電子決済手段であれば電子決済手段等取引業)の登録が必要で、財務要件やマネー・ローンダリング規制を含め、自ら売買・交換を行う業者と同一の規制が課されていました。改正法は、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者と利用者を引き合わせる媒介のみを行う者について、新たに「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」を創設し、登録制としました(改正資金決済法第63条の22の2)。

仲介業は一つの登録ですが、業務の種別として電子決済手段仲介行為と暗号資産仲介行為に区分されており(同法第2条第18項)、いずれも交換業者等の委託を受けて、その委託元のために媒介を行う行為と定義されています。特定の交換業者等に所属して業務を行う所属制であり、銀行代理業や金融商品仲介業と同様の設計です。

仲介業者は、利用者への説明義務や広告規制については交換業者等と同様の規制に服します。一方で、仲介業に関して利用者から金銭その他の財産の預託を受けることが禁止されており(同法第63条の22の13)、資産を預からないことを前提に財務要件は課されません。マネー・ローンダリング規制も、所属先の交換業者等に義務付けられていることから仲介業者には課されません。

規制項目暗号資産交換業仲介業
参入形式登録登録
所属制なしあり
説明義務・広告規制ありあり
利用者資産の預かり分別管理義務預託自体が禁止
財務要件ありなし
マネロン規制ありなし
表2:暗号資産交換業と仲介業の規制比較(金融庁「資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」をもとに当事務所作成)

所属制の下では、利用者保護は所属先の責任を通じて確保されます。仲介業者が仲介行為について利用者に損害を与えた場合には、原則として所属先の交換業者等が賠償責任を負います。ただし、所属先が仲介業者への委託について相当の注意をし、かつ、損害の発生の防止に努めたときは免責されます(同法第63条の22の14)。複数の所属先を持つ仲介業者は、どの損害についてどの所属先が賠償責任を負うかを登録申請書で明らかにする必要があります(同法第63条の22の3第1項第11号、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者に関する内閣府令第5条第4号・第5号)。金融庁はパブリックコメントへの回答で、この記載は利用者がまず責任を追及できる所属先を明確にする趣旨であり、特定の1社のみが責任を負うことまでを求めるものではないとしています。

想定される参入の形態について、金融庁は同じ回答の中で、ゲームアプリ等の提供事業者が自社サービスから交換業者へ送客する形態のほか、対面での勧誘を伴うIFA(金融商品仲介業における独立系アドバイザー)類似のサービスも想定され得るとしています。金融庁は仲介業の登録申請を検討する事業者向けのページを開設しています。

「媒介」該当性の考え方

仲介業の登録が必要になるかは、行おうとする行為が「媒介」に該当するかで決まります。この点は金融庁の事務ガイドライン(暗号資産交換業者関係)が判断の考え方を示しており、契約の締結の勧誘、勧誘を目的とした商品説明、契約の締結に向けた条件交渉を第三者のために行う場合は、原則として媒介に該当するとされています。一方、事務処理の一部のみを行うに過ぎない場合は媒介に至らないことがあるとされ、行為の態様ごとに次のような線引きが示されています。

場面媒介に至らない例媒介に当たり得る例
資料の配布単なる配布・交付記載方法・内容の説明まで行う
申込書の取扱い受領・回収、誤記や添付漏れの指摘記載内容の確認まで行う
比較サイト提供コンテンツの単純転載加工掲載、推奨商品の上位表示
紹介・送客リンク設置、単なる紹介勧誘、独自の推奨・説明
セミナー仕組み・活用法の一般的な説明勧誘を目的とした商品説明
表3:「媒介」該当性の線引き(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係)」をもとに当事務所作成)

顧客を交換業者に送客する場合については、取引の相手方が交換業者であることと、取引の説明が交換業者から提供されることがあらかじめ明示されており、送客元が独自に情報の追加、説明内容の加工、勧誘・推奨・説明等を行わない限り、媒介に至らないとの考え方も示されています。もっとも、媒介に当たるか否かは契約成立に向けた一連の行為における位置づけを踏まえて個別に判断するものとされており、画面設計や誘導の仕方によって結論が変わりうる領域です。仲介業として登録するか、媒介に至らない形にサービスを設計するかは、この線引きに自社のサービスの具体的な仕様を当てはめて検討することになります。

信託型ステーブルコインの裏付け資産運用の柔軟化

信託型ステーブルコイン(特定信託受益権)の発行者は、これまで発行額に相当する裏付け資産の全額を要求払預貯金で保有する必要がありました。改正法は、国際的な動向を踏まえ、発行額の50%を上限に、元本を毀損しない形で、国債および定期預金による管理・運用を認めます(改正資金決済法第2条第9項)。

対象となる運用先は、満期・残存期間が3か月以内の日本国債・米国債と、中途解約が認められる定期預金です。元本を毀損しない形であることを担保するため、内閣府令において、国債については裏付け資産が減少した場合に委託者(電子決済手段等取引業者等)が追加拠出する義務を課すこと、定期預金については解約手数料により元本に満たない金額しか償還されないものは要件を満たさないことが定められています(パブリックコメントへの回答(特定信託受益権の裏付け資産))。金融庁の法案説明資料によれば、米国(NY州)やEUではすでに短期国債等による運用が認められており、発行者が運用収益を得られない従来の規制は、海外のステーブルコインとの競争条件の面で見直しが求められていました。

資産の国内保有命令の導入

2022年11月に海外法人FTX Trading Limitedが破綻した際、日本子会社のFTX Japanは暗号資産の現物とデリバティブの両方を取り扱っていたため、関東財務局は金融商品取引法に基づく資産の国内保有命令を含む行政処分を行い、資産の国外流出を防止できました。しかし、暗号資産の現物のみを取り扱う業者に対しては、資金決済法に同種の規定がなく、同じ手段を執ることができないという制度の隙間が残っていました。

改正法は、暗号資産交換業者(改正資金決済法第63条の16の2)および電子決済手段等取引業者(同法第62条の21の2)について、内閣総理大臣が公益または利用者の保護のため必要かつ適当であると認める場合に、資産のうち政令で定める部分を国内において保有するよう命じることができる規定を導入し、この隙間を埋めました。

クロスボーダー収納代行への規制適用

収納代行(債権者からの委託を受けて債務者から資金を受領するサービス)のうち国境を跨ぐもの(クロスボーダー収納代行)は、改正前は、資金移動業の登録が必ずしも必要とされておらず、海外オンラインカジノや海外出資金詐欺への送金に用いられる事例が指摘されていました。金融安定理事会(FSB)も2024年12月の勧告で、国際送金のリスクに対する整合的な規制・監督を求めています。

改正法は、商品・サービスの取引成立に関与しない者が行うクロスボーダー収納代行について、為替取引に該当するものとして資金移動業の規制を適用します(改正資金決済法第2条の2第2号)。違法な送金行為を行う者は無登録業者として取締りの対象になります。

一方で、利用者保護等の観点からリスクが低いものは規制対象外とされており、内閣府令において、プラットフォーマー等が取引成立に関与する場合、エスクローサービス、受取人との資本関係等の経済的一体性が認められる者が収納代行を行う場合、他法令で規律されている場合の4類型が適用除外として定められています(パブリックコメントへの回答(クロスボーダー収納代行))。越境ECやインバウンド決済のスキームに収納代行を組み込んでいる事業者は、自社の資金フローがこの適用除外に収まるかの確認が必要になります。

施行の際に、新たに規制対象となるクロスボーダー収納代行を現に営んでいた事業者には経過措置があり、原則として施行日から6か月間は従前の業務を継続できます。その期間内に資金移動業の登録を申請した場合は、登録または登録拒否の処分があるまで業務を継続できますが、施行日から2年を経過したときはこの限りでないとされています(改正法附則第2条)。また、附則には、施行後3年を目途として、規制の適用対象となる行為の範囲その他の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる旨の検討条項も置かれており(附則第9条)、適用範囲の線引きは今後見直される可能性があります。

利用者資金の返還方法の多様化

資金移動業者が利用者から受け入れた資金の保全方法としては、供託のほか銀行等による保証や信託が認められていますが、改正前は、保証・信託の場合であっても、破綻時には供託手続を通じて国が各利用者に返還する必要があり、返還までに最低170日を要していました(金融庁の法案説明資料)。改正法は、既存の供託を経由する返還手続に加え、保証機関や信託会社等が利用者に直接返還する方法を追加し(改正資金決済法第45条の3〜第45条の5等)、迅速な返還を可能にしています。

資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)では、破綻時に労働者へ6営業日以内に賃金相当額を返還する仕組みが求められており、直接返還の枠組みの整備は、こうした資金移動業の利用拡大を下支えするものでもあります。

暗号資産規制の金商法移管との関係

今回の施行は、資金決済法の枠内での見直しです。これと並行して、暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す法改正が進んでおり、暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告の公表で整理した報告を踏まえた改正法案が2026年4月10日に国会へ提出されています。もっとも、電子決済手段(ステーブルコイン)は移管後も引き続き資金決済法の規制対象とされており、資金移動業関連の改正も影響を受けません。暗号資産関連の規制については、移管の施行までは今回施行された資金決済法の枠組みが適用されることになり、仲介業への参入等を検討する事業者は、二段階の制度変更を前提にしたスケジュール設計が必要になります。

2026.8.24 追記: 金商法移管を内容とする改正法案は2026年7月15日に成立し、7月23日に公布されました(令和8年法律第64号)。暗号資産規制の主要部分の施行日は、公布の日から1年以内で政令により定められます。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、法務コンサルティングにおいて、暗号資産・ステーブルコインや決済サービスに関する規制の該非判断、制度改正を踏まえた対応の検討に対応しています。仲介業への該当性や収納代行の適用除外の判断など、規制の適用関係について書面での見解が必要な場合の対応も扱っています(法律意見書)。仲介業の登録を見据えた新規サービスの立ち上げについて、事業スキームの設計から登録申請に向けた体制整備までの検討も、あわせて扱います(新規事業推進)。

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