ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年12月25日 更新: 2026年4月14日

AIの適正性確保に関する指針の決定

目次

人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」が2025年12月19日に人工知能戦略本部で決定されました。AI推進法13条に基づく初めての指針です。

参考記事: AI推進法の成立(2025年7月14日)

内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」(令和7年12月19日人工知能戦略本部決定)の表紙

水準を定めない指針

全10ページの短い文書で、AI法4条から8条で責務が規定される全ての主体、すなわち国、地方公共団体、研究開発機関、活用事業者、国民を対象としています。守るべき水準は示されません。

本指針では、適正性確保に当たって、適正性についての一義的な定義や絶対的な水準を定めるものではなく、各主体が研究開発、活用するAIの特性、用途、目的や、自身の立場、社会的役割等を踏まえて自主的に取組を進めるという考え方の下、(中略)考慮すべき主な要素を以下のとおり示す。
出典: 内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」

示されるのは要素と基本方針です。要素は、人間中心、公平性、安全性、透明性、アカウンタビリティ、セキュリティ、プライバシー・個人情報、公正競争、AIリテラシー、イノベーションの10項目。基本方針は、リスクベースでのアプローチ、ステークホルダーの積極的な関与、一気通貫でのAIガバナンスの構築、アジャイルな対応の4つです。

取り組むべき事項については、各主体の規模や立場、AIがもたらすリスクに応じ、その時点で適用し得る技術や知見を踏まえて適切な水準で対応することが求められるとされています。水準は自社で決めることになります。

名宛人の二段構え

AI法7条の「活用事業者」は、AIを活用した製品またはサービスの開発・提供をしようとする者に加えて、「その他の人工知能関連技術を事業活動において活用しようとする者」を含みます。業務でAIを使うだけの会社も、この定義には入ります。

一方、指針が「特に取り組むべき事項」の対象としているのは、AIを活用した製品・サービスの開発、提供をする活用事業者と、開発したAIを第三者に提供する研究開発機関です。活用事業者については海外事業者も含むとされています。

つまり、AIを社内で使うにとどまる会社は、指針が示す要素を認識し理解することが求められる立場にあり、以下の5項目の直接の対象として挙げられているわけではありません。自社がどちらの立場かで、読み方が変わります。

なお、指針自体が新たな法的義務や罰則を課すものではありません。全体が、自主的かつ能動的な取組を促すものとして位置づけられています。

事業者が取り組むべき5項目

これらの主体に対しては、次の5つが挙げられています。

  • AIガバナンスによる俯瞰的な適正性の確保
  • ステークホルダーとの信頼関係の構築に向けた透明性の確保
  • 十分な安全性の確保
  • 事業継続性確保による安全な環境の維持
  • AIのイノベーションの基盤となるデータの重要性を踏まえたステークホルダーへの配慮

中心はAIガバナンスです。設計・開発・提供・実装等のライフサイクル全体でリスクを特定・評価・対処する組織的なプロセスを構築し、運用し、継続的に改善することとされ、経営層の関与したモニタリングや評価の仕組み、情報の適切な開示、教育・研修の実施が例示されています。

もっとも、ゼロから作ることは求められていません。指針は、既存のITシステム等に適用されているガバナンスプロセスを活用することも有用だとしており、AIマネジメントシステムの国際規格(ISO/IEC 42001)にも触れています。

ガイドライン・基本計画との関係

指針の4日後、12月23日には人工知能基本計画が閣議決定されています。こちらはAI法18条に基づき政府が講ずべき施策を定める計画で、事業者の行動に関わるのは指針の側です。

一方、総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインについては、指針は言及していません。「国際的な規範、国際規格、各種ガイドライン等を活用しつつ」と述べるにとどまり、脚注で、国内外のAIに関する規範・ガイドライン等は内閣府ウェブサイトで示す予定とされています。

指針の決定時点では、上下関係も置き換えも示されていません。当面は両方を見ることになり、指針で要素と基本方針を確認し、具体的な進め方はガイドラインで補う、という読み方が現実的です。

2026.4.14 更新: 指針の脚注で示す予定とされていた各府省庁等のガイドライン等の一覧が、その後内閣府のウェブサイトに掲載されました。AI事業者ガイドラインもそこに含まれています。

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当事務所では、AIガバナンス構築において、AIの利用範囲の整理やライフサイクルに沿った管理プロセスの設計に対応しています。既存のIT統制や社内規程との接続、AI利用規程や記録の様式への落とし込みも、あわせて扱います(規程・ポリシー整備)。

AIサービスの利用契約や開発委託の条項整備は契約のレビューとして(契約書作成・レビュー)、自社が活用事業者としてどこまでの対応を求められるかを書面で整理する必要があるときは意見書の作成として扱います(法律意見書)。社内体制の整理から進めることもできます(法務コンサルティング)。

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