ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年3月25日

令和8年地価公示の結果

令和8年地価公示の結果が国土交通省より発表されました。
本記事では、当事務所が存する東京23区を中心に、地価公示結果の概要を紹介します。

参考記事:令和7年地価公示の結果

地価公示制度とは

地価公示制度は地価公示法に基づく制度です。国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1回、全国約26,000箇所の「標準地」の正常な価格を公示するものです。

価格評価の基準日は1月1日であり、毎年3月下旬に結果が公表されます。令和8年は26,000地点を調査対象とし、調査を休止している地点を除く25,565地点で価格が判定されました。

令和8年地価公示の結果概要

全国的な傾向

全国平均の変動率(前年比)は、全用途平均+2.8%、住宅地+2.1%、商業地+4.3%、工業地+4.9%となりました。全用途平均・住宅地・商業地はいずれも5年連続の上昇です。

もっとも、上昇の勢いは用途によって分かれました。全用途平均と商業地は上昇幅が拡大した一方、住宅地は+2.1%と前年と同じ上昇幅にとどまりました。

圏域による差

圏域別の全用途平均の変動率は、東京圏+5.7%(前年+5.2%)、大阪圏+3.8%(同+3.3%)、名古屋圏+2.3%(同+2.8%)、地方圏+1.2%(同+1.3%)となりました。

注目すべきは、上昇幅が拡大したのが東京圏と大阪圏だけだった点です。名古屋圏は住宅地・商業地・工業地のいずれも上昇幅が縮小しました。また、令和5年前後に全国トップクラスの上昇率を示していた地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)は+4.5%(前年+5.8%)と2年続けて減速しています。地方圏のうち地方四市を除く地域は+0.8%で、前年と同水準にとどまりました。

令和5年から令和6年にかけては、地価の上昇が全国へ波及していく局面でした。令和8年の結果には、上昇の中心が東京圏と大阪圏、とりわけ東京圏へ相対的に集中する動きが見られます。

なお、全国の変動率上位地点は東京ではありません。商業地の上位4地点のうち3地点を北海道千歳市が占め(最高は+44.1%)、住宅地の1位は長野県白馬村(+33.0%)でした。半導体工場の進出やインバウンド需要という個別要因が、都市部の一般的な地価上昇をはるかに上回る変動を生んでいます。

東京圏の傾向

東京圏の変動率(前年比)は、住宅地+4.5%、商業地+9.3%、工業地+6.8%となりました。住宅地・商業地とも全国平均を大きく上回り、特に商業地は前年の+8.2%から1.1ポイント上昇幅を広げています。

一方、工業地は前年の+7.1%から+6.8%へと、東京圏で唯一上昇幅が縮小しました。Eコマース向け物流施設用地の需要自体は堅調です。東京都は、多摩地区について、高速道路等へのアクセスが良好な大規模画地への需要は堅調であるものの、原材料価格の高騰等の懸念により上昇幅は縮小傾向にあると説明しています。

東京23区の傾向

東京23区(区部)に絞ると、住宅地+9.0%、商業地+13.8%、工業地+10.7%、全用途平均+11.1%となりました。住宅地は5年連続で、商業地は4年連続で、全23区の変動率がプラスです。

住宅地の+9.0%、商業地の+13.8%は、いずれも平成20年(住宅地+10.4%、商業地+17.3%)以来18年ぶりの高い上昇率です。平成19年から平成20年にかけての上昇局面に迫る水準まで戻ってきたことになります。

住宅地では、港区(+16.6%、前年+12.7%)、台東区(+14.2%、同+10.2%)、品川区(+13.9%、同+11.9%)が高い上昇率を示しました。都心5区の平均は+13.0%です。一方、23区で最も上昇率が低い葛飾区でも+5.6%、江戸川区+5.7%、練馬区+6.2%となっており、区による差はあるものの、下落した区はありません。

商業地では、台東区(+19.1%、前年+14.8%)が最も高く、文京区(+17.8%、同+12.8%)、中野区と杉並区(いずれも+17.5%)が続きました。都心5区の平均は+13.6%で、23区平均の+13.8%をわずかに下回っています。上昇率だけを見れば、城西・城北の一部が都心5区を上回った形です。もっとも、変動率は価格水準の低い地点ほど大きく出やすいため、価格そのものが逆転したわけではありません。全国最高価格地点は20年連続で中央区銀座4丁目(山野楽器銀座本店)で、令和8年の価格は1平方メートル当たり6,710万円、変動率は+10.9%(前年+8.6%)でした。

工業地は区部で+10.7%(前年+9.6%)でした。湾岸部の物流施設用地に加え、マンション建設が可能な土地で用途間の需要が競合していることが背景にあります。

多摩地区は住宅地+3.9%、商業地+6.0%と、区部との差が開いた状態が続いています。島部は住宅地▲0.1%、商業地▲0.3%で、東京都内で唯一の下落地域です。

半年単位の動向

上昇が加速しているのか減速しているのかは、年間の変動率だけでは分かりません。この点は、地価公示と後述する地価調査の共通地点について、半年ごとの変動率を見ることで確認できます。

東京都内の共通地点217地点では、令和7年の前半期(1月1日から7月1日)が住宅地+3.4%・商業地+5.3%、後半期(7月1日から令和8年1月1日)が住宅地+3.7%・商業地+6.2%でした。このうち区部に限ると、前半期が住宅地+4.3%・商業地+6.4%、後半期が住宅地+4.7%・商業地+7.0%となります。いずれも前年に続いて後半期のほうが高く、上昇テンポは鈍っていません。全国の共通地点1,587地点でも、後半期のほうが高いか同水準です。

令和8年1月1日より後の動向は、今回の地価公示には反映されていません。

地価公示の影響

地価公示の結果は、企業や個人に様々な影響を与えます。以下はその例示です。

固定資産税・相続税への影響

固定資産税評価額及び相続税路線価は、公示地価の水準と連動して決定されます。一般に、固定資産税評価額は公示地価の7割、相続税路線価は公示地価の8割程度とされています。相続税路線価は毎年1月1日を評価時点とし、その年の7月1日に国税庁から公表されます。

特に留意が必要なのは固定資産税です。固定資産税の土地評価額は3年ごとに評価替えが行われ、令和9年度がその基準年度にあたります。そして、令和9年度評価替えの価格調査基準日は令和8年1月1日です。今回の地価公示と同じ時点の地価水準が、標準宅地の鑑定評価等を通じて令和9年度以降3年間の評価額に反映されることになります。

前回の価格調査基準日である令和5年1月1日からの3年間で、東京23区の平均変動率を機械的に累積すると、住宅地で約24%、商業地で約36%の上昇となります。もっとも、評価額は個別の画地補正を経て決まりますし、税額は住宅用地特例や負担調整措置を通じて算出されるため、地価の上昇率がそのまま税額の上昇率になるわけではありません。それでも上昇要因であることは変わらないため、保有不動産の多い法人においては、令和9年度以降の固定資産税を織り込んだ収支計画をあらかじめ立てておくべきでしょう。

地代への影響

借地契約における継続地代の鑑定評価には、差額配分法、利回り法、スライド法等の様々な手法が用いられますが、いずれの手法でも公示地価の上昇は継続地代にプラスの影響を与えます。

土地所有者(地主)においては、地価公示における土地価格の上昇を考慮して、地代の増額請求を行うべきか積極的に検討すべきでしょう。反対に、公示地価の上昇幅の大きい地域に借地を持つ借地権者は、地主からの地代増額請求に備える必要があります。

もっとも、公示地価の上昇だけで増額が認められるわけではありません。借地借家法11条は、土地価格の変動等により現行地代が不相当となったことを増減額請求の要件としており、相当な地代は公租公課、近隣の地代水準、契約内容、直近合意時点以降の経緯等を総合して判断されます。23区の住宅地・商業地がいずれも4年ないし5年続けて全区プラスとなっている現状は、直近の改定から相当期間が経過している契約について、現行地代の妥当性を検証する契機となります。

参考記事:地代増額請求について

家賃への影響

公示地価は建物ではなく土地の価格ですが、鑑定理論上、土地価格の上昇は正常家賃の水準にも影響を与えます。すなわち、家賃についても増額請求につながる可能性が考えられます。

(参考)不動産鑑定士による土地価格の鑑定評価と公示地価

不動産鑑定士による土地価格の鑑定評価においては、公示地価を「規準」とすべき旨が、国土交通省の不動産鑑定評価基準において定められています。

地価公示法施行規則第1条第1項に規定する国土交通大臣が定める公示区域において土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない。

不動産鑑定評価基準

もっとも、実際の鑑定評価では、近隣の標準地の公示地価と乖離した評価額が出されることは珍しくありません。特に都心部の商業地では、公示地価と実際の取引価格の乖離が顕著であるため、地価分析にあたっては公示地価だけでなく実際の取引データも可能な限り参照すべきといえます。

地価調査とは

地価調査とは、各都道府県が毎年1回、全国約21,000箇所の「基準地」の正常な価格を評価し公表する制度です。地価公示法とは別の法律(国土利用計画法)によって定められている制度です。

土地の正常価格を公の機関が公示するという点では地価公示と似ていますが、重要な相違点として、地価調査は基準日が毎年7月1日とされています。地価公示とちょうど半年ずれているため、両者をうまく併用して地価のトレンドを分析するのが一般的です。特に、地価公示と地価調査の共通地点(令和8年は1,587地点)では、半年ごとに連続して公の価格が公示されることとなるため、該当エリアにおける土地価格の趨勢分析に広く活用されています。前述の半年単位の動向は、この共通地点の集計によるものです。

地価公示の分析に有用なサイト

地価公示・地価調査の結果の分析にあたっては、以下のサイトが有用です。

  • 不動産情報ライブラリ 国土交通省が2024年4月1日に公開したウェブサイトです。不動産の取引価格、地価公示等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する幅広い情報を提供しています。個別地点の令和8年の価格も公示日から掲載されています。
  • 東京都の地価 東京都不動産鑑定士協会が提供するツールです。東京都だけでなく、全国の地価公示及び地価調査の結果を、昭和56年まで遡ってマップ上で確認することができます。
  • 全国地価マップ (一財)資産評価システム研究センターが提供するツールです。地価公示だけでなく、固定資産税路線価及び相続税路線価もマップ上で確認することができます。
  • rpamap 検索機能に優れた公示地価マップです。

参考記事:不動産情報ライブラリの公開

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

令和8年の地価公示は、東京23区の地価上昇が平成20年以来の水準に達したこと、そして半期ベースでもその勢いが衰えていないことを示しました。土地価格の上昇に加えて建築コストや維持管理コストの上昇も続いており、令和9年度には固定資産税の評価替えも控えています。これらは、賃貸人が地代・家賃の見直しを検討する契機となります。もっとも、増額の可否や相当額は、公示地価だけでなく、公租公課、近隣の賃料水準、契約内容、直近の合意時点以降の経緯等を踏まえて個別に判断する必要があります。

当事務所は、争訟・紛争対応において地代・家賃の増減額請求や明渡しを扱っています。金額の妥当性そのものが争点となる場面が多い領域であり、不動産鑑定士として評価実務を扱ってきた経験から、根拠を示した主張を行います。税務・登記に波及する論点についても事務所内で扱うため、窓口を分けずにご相談いただけます。

まずはご相談ください

ご相談内容をお聞きし、最適なサービスをご提案いたします。

お問合せはこちら