ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年4月21日

共有不動産の管理と解消

目次

相続や共同出資により不動産が複数人の共有になると、修繕や賃貸、売却を行う際に、その内容に応じて他の共有者との調整が必要になります。令和3年の民法改正は、共有物の使用・管理・変更の決定ルールを整理し、所在等不明共有者を除いて意思決定を行うための裁判手続を新設するとともに、共有関係を解消するために裁判所が命じることのできる分割方法を明文化しました(民法等の一部を改正する法律・令和3年法律第24号、共有に関する部分は令和5年4月1日施行)。

この記事では、共有不動産をめぐる規律を、利用の場面と解消の場面に分けて整理します。

参考記事: 不動産の住所等変更登記の義務化(2026年4月7日)

共有物の使用と管理

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(249条1項)。令和3年改正では、これに加えて、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うこと(同条2項)、共有物の使用にあたって善良な管理者の注意義務を負うこと(同条3項)が明記されました。相続した不動産に相続人の一人が居住しているような場合に、この規律が問題になります。

民法は、共有者が共有物について何をするかに応じて、保存行為・管理に関する事項・変更の3つに区分し、それぞれ必要な同意の範囲を定めています。

行為必要な同意条文
保存行為各共有者が単独で可能252条5項
管理に関する事項持分の価格の過半数252条1項
軽微な変更持分の価格の過半数251条1項・252条1項
著しい変更共有者全員の同意251条1項
表1:共有物についての行為と同意の範囲(民法をもとに当事務所作成)

令和3年改正前の251条は、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意を得なければならないと定めるだけで、変更の程度による区別を設けていませんでした。そのため、どの範囲の行為に全員の同意が必要かが明確ではありませんでした。改正後の251条1項は、変更のうち「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除いており、砂利道の舗装や建物の大規模修繕は、その範囲や程度によっては、軽微な変更として持分の価格の過半数で決められる場合があります。共有不動産の全体を売却する場合は、従来どおり全員の同意が必要です。

決定が持分の価格によることにも注意が必要です。頭数ではないため、3人の共有者のうち1人が持分の3分の2を有していれば、その1人の判断で管理に関する事項を決められます。

賃貸借については、持分の価格の過半数で設定できる期間の上限が定められました。山林の賃借権等は10年、その他の土地は5年、建物は3年、動産は6か月で、これを超える期間の権利を設定するには、変更として全員の同意が必要になります(252条4項)。もっとも、期間がこの範囲内であっても、借地借家法の適用がある賃貸借は、期間が満了しても正当の事由がなければ更新を拒むことができず、事実上長期間継続する可能性があります。法制審議会の部会資料は、この点を理由に、建物の所有を目的とする借地権を持分の価格の過半数で設定できるものとはしていません(民法・不動産登記法部会資料27)。期間の満了によって確定的に終了する定期建物賃貸借のように、更新のない類型であればこの問題は生じませんが、共有不動産を賃貸する場面では、借地借家法の適用の有無を踏まえた検討が必要になります。また、共有者間の決定に基づいて共有物を使用している共有者に特別の影響を及ぼす決定をするには、その共有者の承諾を得なければなりません(252条3項)。

連絡が取れない共有者がいる場合

共有者の一部と連絡が取れない場合、共有不動産の利用も処分も進められない状態が生じます。民法は、「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」のその共有者を所在等不明共有者と呼び、この場合に採ることのできる手続を定めています(251条2項、262条の2第1項ほか)。

相続登記がされないまま世代が進み、登記簿上の名義人が既に死亡して相続人を特定できない場合や、登記簿上の住所に居住しておらず転居先を追えない場合が、これに当たります。もっとも、判明している共有者の持分の価格が全体の過半数に達していれば、管理に関する事項は通常どおり決められます(保存行為は各共有者が単独で行えます)。裁判所の手続が必要になるのは、全員の同意を要する変更を行う場合と、所在等不明共有者の持分が大きく過半数を形成できない場合です。

所在等不明に当たるかどうかを判断するのは、申立てを受けた裁判所です。申立てにあたっては、登記記録や住民票などの調査によっても所在が判明しないことを示す必要があり、登記記録が調査の出発点になります。

手続の種類と手続保障

所在等不明共有者を除いて決定するといっても、その共有者が現れる可能性は残ります。そのため、いずれの裁判にも、公告や通知と一定の期間による手続保障が置かれています。

裁判主な事前手続期間
変更・管理の決定裁判所による公告1か月以上
賛否不明者の除外共有者の催告と裁判所の通知1か月以上
持分の取得公告・通知・供託3か月以上
持分の譲渡権限付与公告・供託3か月以上
表2:所在等不明共有者等に関する裁判の手続(非訟事件手続法をもとに当事務所作成)

変更を加える場合は、裁判により、所在等不明共有者以外の共有者の同意で変更できます(251条2項)。管理に関する事項は、裁判により、所在等不明共有者以外の共有者の持分の価格の過半数で決められます(252条2項1号)。いずれも、裁判所が申立てがあったことなどを公告し、1か月以上の異議届出期間が経過した後でなければ裁判はできません(非訟事件手続法85条2項)。

所在は判明していても賛否を明らかにしない共有者がいる場合にも、その共有者を除いた過半数で決めることができます。この場合は、まず共有者が相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告し、その期間内に賛否が示されないことが前提になります(252条2項2号)。手続では公告ではなく本人への通知によることとされ、1か月以上の期間内にその共有者が賛否を明らかにしたときは、その者についてこの裁判をすることはできません(非訟事件手続法85条3項・4項)。

持分の取得と譲渡権限の付与

不動産については、共有関係から所在等不明共有者を外す手続も用意されています。裁判により、他の共有者がその持分を取得する方法(262条の2)と、他の共有者全員が持分を特定の者に譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分もあわせて譲渡する権限を与える方法(262条の3)です。前者は共有者間で持分を集約する場面、後者は不動産全体を第三者に売却する場面で用いられます。

この2つの手続は、共有関係から共有者を一人外すという重い効果を持つため、手続保障も厚くなっています。裁判所は申立てがあったことなどを公告し、3か月以上の異議届出期間の経過を待つ必要があり、申立人には、所在等不明共有者のために裁判所が定める額の金銭を供託することが命じられます(持分の取得について非訟事件手続法87条2項・5項、譲渡権限の付与について同法88条2項)。供託の命令に従わないときは、申立ては却下されます(同条8項)。持分取得の裁判では、公告に加えて、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者への通知も行われます(同条3項)。供託された金銭は、所在等不明共有者が現れたときの支払に充てられるもので、裁判の効力が生じた後に申立人が自由に取り戻せる性質のものではありません。現れないまま供託金の還付請求権が時効にかかれば、供託金は国庫に帰属します。また、譲渡権限の付与の裁判は、その効力が生じた後2か月以内に持分の譲渡の効力が生じないと失効します(同法88条3項)。裁判所が期間を伸長することはできますが、譲渡の相手方と条件を固めてから申し立てる必要があります。

その後、所在等不明共有者は、持分の時価相当額(262条の3では不動産の時価相当額を持分に応じて按分した額)の支払を請求することができます(262条の2第4項、262条の3第3項)。供託すべき額も、後に請求されうる額も、不動産の価額を前提に決まるため、手続を選ぶ段階からその見積もりが問題になります。

なお、所在等不明共有者の持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、相続開始から10年を経過していなければ、これらの裁判をすることはできません(262条の2第3項、262条の3第2項)。

共有関係の解消

共有関係を終わらせるには、共有物の分割によります。協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、裁判所に分割を請求できます(258条1項)。

令和3年改正は、裁判所が命じることのできる分割方法を明文化しました。共有物の現物を分割する方法と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法(賠償分割)が並び(258条2項)、これらの方法によることができないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときに、競売が命じられます(同条3項)。分割の裁判では、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることもできます(同条4項)。

賠償分割が条文上の選択肢として明確になりました。不動産を物理的に切り分けずに、一部の共有者が取得して他の共有者に金銭を支払う形です。この場合、支払うべき金額の前提として、不動産の価額をいくらと見るかが正面から争点になります。

遺産共有との関係

相続によって生じた共有(遺産共有)の解消は、共有物分割ではなく遺産分割の手続によります。共有物の全部またはその持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべきときは、258条による分割はできません(258条の2第1項)。

もっとも、通常の共有持分と遺産共有持分が併存する場合には、相続開始から10年を経過した後は、相続財産に属する共有持分についても258条による分割ができます(同条2項)。共有者の一人が死亡し、その持分だけが相続人の間で遺産共有になっているような場合です。遺産分割の請求があり、相続人が、裁判所から請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内に異議の申出をしたときは、この限りではありません(同条2項ただし書・3項)。

これに対し、不動産の全体が共同相続人の遺産共有となっている場合は、10年を経過した後も遺産分割の手続によります。

10年という期間は、長期間放置された遺産共有を画一的な割合で整理できるようにするため、遺産分割の内容にも及びます。相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分によらず、法定相続分等によることになります(904条の3)。ただし、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合などには例外があり、2023年4月1日より前に開始した相続には、同日から5年間の猶予を含む経過措置が設けられています(同条各号、改正法附則3条)。

実務上の対応

令和3年改正によって、共有者の一部と連絡が取れない場合でも手続を進める道が開かれました。もっとも、いずれの手続も裁判所の関与を要し、公告や催告の期間だけで1か月から3か月を要します。共有関係は、生じた後に解消するよりも、生じる段階で枠組みを定めておく方が負担が小さくなります。

共有関係に入る段階で定めておけることもあります。持分割合のほか、共有者の一人が共有物を使用する場合の対価の扱いがその一例です。249条2項は「別段の合意がある場合を除き」としており、当事者の合意で異なる扱いを定める余地があります。

既に共有となっている不動産については、共有者との連絡が取れるうちに解消の方針を決めることになります。相続が絡む場合は、期限の管理も必要です。10年という期間は二つの方向に働き、原則として、相続開始から10年を経過すると具体的相続分による遺産分割を求められなくなる一方(904条の3)、所在等不明共有者の持分取得等の裁判は、10年の経過が要件になります(262条の2第3項、262条の3第2項)。

金額の算定が必要になる場面も、あらかじめ見込んでおくことになります。

  • 持分取得の裁判で命じられる供託の額(非訟事件手続法87条5項)
  • 所在等不明共有者から後に請求されうる時価相当額(262条の2第4項、262条の3第3項)
  • 賠償分割において取得する共有者が支払う金額(258条2項2号)

いずれも不動産の価額を前提とするため、手続を選ぶ段階で評価の見通しを立てておくことになります。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、争訟・紛争対応において、共有物分割や所在等不明共有者に関する裁判手続に対応しています。これらの手続では、賠償分割の金額や持分の時価相当額といった、金額の妥当性そのものが争点になります。不動産鑑定士として評価実務を扱ってきた経験から、根拠を示した主張を行います。裁判に至る前の共有関係の整理や、持分の移転に伴う登記も、あわせて扱います(法務コンサルティング登記申請)。

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