ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年11月8日

企業サイトの情報発信と外部送信規律

目次

総務省は2026年11月4日、電気通信事業法の外部送信規律について、法令遵守事項と望ましい対応を示す「手引き」を含む利用者情報ワーキンググループ第2次報告書を公表しました。8月20日から9月18日までの意見募集を経て、案の一部が修正されています。報告書によれば、規律の対象となる事業者のサイトのうちアクセス数が多いものを抽出した2025年12月の総務省委託調査で、アプリを提供していないウェブサイトの遵守率は43.2%にとどまりました。

手引きでは、業界の動向やコラムを掲載したコーポレートサイトが規律の対象になる例として挙がっています。従来は自社の情報発信のためのサイトは電気通信事業に当たらないと整理されており、今回の例示はこれより踏み込んだものです。

根拠法令は電気通信事業法第27条の12と同法施行規則第22条の2の27から第22条の2の31までです。解釈は総務省の外部送信規律FAQと電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドラインの解説(令和8年6月14日版)で示されており、手引きの本文は報告書の別添にあります。

※本記事は2026年11月4日に公表された報告書と手引きに基づきます。該当性の判断は個別の事情によるため、実際の検討では最新の資料をご確認ください。

参考記事: 令和8年改正個人情報保護法の成立(2026年7月31日)

外部送信規律の要点

外部送信規律は、2022年の改正(令和4年法律第70号)で設けられ、2023年6月16日に施行されました。対象は、電気通信事業者または第三号事業を営む者のうち、利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務を提供する者です。利用者の端末から情報を外部に送信させる指令(情報送信指令通信)を行う前に、情報の内容や送信先などを利用者に確認させる機会を与える義務が定められています。

Cookieを使っているかどうかや、送信される情報が個人情報に当たるかどうかは問われず、サイト運営者自身のサーバへの送信も対象です(FAQ 問1-7、問1-15、問1-16)。

方法内容位置づけ
通知ポップアップ等で即時に表示法令上の原則
公表容易に知り得る状態に置く法令上の原則
同意送信について利用者の同意を得る適用除外(3号)
オプトアウト利用者の求めで送信または利用を停止適用除外(4号)
表1:確認の機会の付与の方法(電気通信事業法第27条の12をもとに当事務所作成)

対象となる役務は、施行規則第22条の2の27で4類型に分けられています。企業サイトに関わるのはこのうち第4号で、ニュース、気象情報、動画配信など、不特定の利用者の閲覧に供する情報をオンラインで提供する役務がこれに当たります。

利用者数の下限は定められておらず、開設直後で利用者が少ないニュース配信サイトも該当します(FAQ 問1-11)。また、判断はページ単位で、同じサイトでもニュース配信のページは対象、会社案内のページは対象外と扱いが分かれます(問2-12)。

自社サイトの情報発信

自社サイトにコラムや業界情報を掲載する場合、その提供が電気通信事業に当たるかが問題になります。

事業性の判断

「事業」性については、総務省の電気通信事業参入マニュアル(追補版)(令和5年1月30日改定)で、情報の送受信自体にサービスとして独立の意味がある場合に電気通信事業に当たるとされています。他のサービスに付随して電気通信役務を提供することは、これに含まれません。同ガイドブックでは、本来業務の遂行手段である「情報提供(手段)」と、情報の送信自体が商品である「情報提供(事業)」が区別され、次のように整理されています。

サイト内容該当性
企業のサイト自社の概要や商品を周知するために開設するもの当たらない
ニュース情報の送信自体が商品であるオンラインニュース当たる
個人のサイト趣味や知識の発信のために開設し、サーバ代の一部を賄う程度の広告を貼るもの当たらない
情報サイト広告やアフィリエイトで利益を上げる目的で運営するもの当たる
表2:電気通信事業に当たるかどうかの従来の整理(総務省「電気通信事業参入マニュアル(追補版)ガイドブック」をもとに当事務所作成)

この考え方は、ガイドラインの解説で外部送信規律にも適用されています。金融事業者の例でいえば、オンライン取引に必要な株価情報の提供は電気通信事業に当たらず、取引とは独立した金融ニュースの配信はその部分が電気通信事業に当たるとされています。

手引きの例示

手引きでは、企業が自己の情報発信や自社商品の販売のために設置するサイトでも、それとあわせて「(自己や自社商品の情報ではない)各種情報の提供を行っている場合は規律対象となる」とされ、次の例が挙げられています。

場面掲載する情報規律
コーポレートサイト最新の各業界の動向、ニュース、コラム対象
採用情報各業界研究のまとめやニュース対象
採用情報職種や事例の紹介、社員インタビュー、セミナーの開催対象外
自社商品の販売口コミ、利用者の声、自社商品のみを使用したレシピ対象外
自社商品の販売自社商品に関連した他社のイベントやキャンペーンの情報対象
他社との協業他社とコラボして開催するイベントと商品の販売対象外
金融・旅行商品の販売投資情報や観光情報対象
人材派遣・宅建業自らの求人情報、自ら販売する物件情報対象外
個人のサイトおすすめの商品や店をまとめた記事(利益を得ている場合)対象
表3:手引きが示す該当性の例(報告書別添「手引き」3(3)をもとに当事務所作成)

手引きでも、参入マニュアルとガイドブックの参照が求められています。ただ、個々の例示では「独立した事業」といえるかの判断の過程は示されず、自己や自社商品の情報以外も載せているかで区分されています。字義どおりに読むと、専門分野の解説記事を載せている企業サイトの多くが対象になります。

意見募集では、自社商品に付随する情報がどこまで対象外になるのか、判断基準を示してほしいという意見が出ましたが、総務省は、代表例を記載したものとして、迷う場合は総務省に問い合わせるよう求めるにとどめています(提出された意見及び総務省の考え方)。

専門分野の解説記事

自社の商品やサービスの周知のため、その分野の解説を自社の名で発信していれば、本来業務の遂行手段としての情報発信と整理する余地があります。ただし、自社名義や販促目的というだけでは決まらず、解説の内容が本来業務とどの程度結びついているかが問われます。総務省も2023年の意見募集の結果で、取引から独立した金融情報の配信の例として「株取引の仲介業務とは独立して、運用のコツや狙い目の銘柄等を紹介しているようなウェブサイト」を挙げています。

他社の商品を扱っていること自体は決め手になりません。手引きでも、様々なメーカーの製品を仕入れて自社サイトで販売する家電小売業者は、本来業務の遂行手段として対象外とされています。これに対し、販売から離れて、他社を含む分野全体の情報を網羅して提供している場合には、情報の送信が独立した事業と評価されやすくなります。広告やアフィリエイトで利益を上げる目的で運営している場合や、コンテンツの提供自体が収益源の場合も同様です。こうした場合は、規律の対象と考えて対応するのが安全です。

対象になる場合の記載

通知または公表する事項は、送信される情報の内容、送信先で情報を取り扱う者の氏名または名称、利用目的の3つです(施行規則第22条の2の29)。送信先はサービス名だけでは足りず事業者名を明記し、利用目的は送信する側と送信先の双方について記載します(FAQ 問4-2、問4-3)。

文字や映像を適正に表示するための情報など、役務の提供に真に必要な情報の送信は除外されます。ただし、除外はその範囲内の送信に限られます(第27条の12第1号)。運営者が利用者の識別のために送った識別符号(ファーストパーティCookieのIDなど)を運営者自身のサーバに送る場合も除外されますが(同条第2号)、そのIDと一緒に送る情報やIDを使って第三者に送る情報までは除外されません(FAQ 問6-3、問6-4)。記載方法については、手引きで次の点が挙げられています。

  • 外部送信を行うツールやサービスの単位で、送信される情報の内容、送信先、利用目的を記載する
  • 送信先については、事業者名に加えてサービス名と国名を併記することが望ましい
  • 利用目的は、広告配信、効果測定、行動分析など、用途が判別できる程度に具体的に書く
  • プライバシーポリシーの中に書くことは妨げられないが、「利用者情報の外部送信について」のように別の見出しを立てることが望ましい
  • 送信している情報や送信先を定期的に確認し、変更があれば記載を更新する

委託調査で遵守が不十分とされたサイトの大半は、対応はしているものの一部が欠けているものでした。たとえば、「Cookieを使用しています」の一文だけで送信先の記載がない、送信先事業者の英語ページへのリンクだけで済ませる、といった記載は規律の要件を満たしません。導入当時のまま、後から追加したタグが反映されていない記載も同様です。

同意やオプトアウトの措置を講じれば通知・公表は要しませんが、措置が十分に実施されていることが条件です。オプトアウトによる場合も、措置を講じている旨や求めの受付方法に加え、送信される情報の内容、送信先、利用目的を利用者が容易に知り得る状態に置く必要があります(施行規則第22条の2の31)。報告書では、まずオプトアウトで利用者の関与の機会を確保することが「法令から一歩進んだベストプラクティス」として推奨されています。手引きでは、同意を得る場合、チェックボックスにあらかじめチェックを入れておく方法や、同意しないと先に進めない仕様、何もせず画面を遷移したことを同意とみなす仕様などを避けることが求められています。

改善命令と罰則

違反そのものに罰則はありませんが、総務大臣は業務の方法の改善その他の措置を命じる権限を持ち(第29条第2項第1号・第4号)、この命令に違反すると200万円以下の罰金の対象になります(第186条第3号)。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、規程・ポリシー整備において、外部送信規律に対応した表示やプライバシーポリシーの作成と見直しに対応しています。自社のウェブサイトやアプリが規律の対象になるかの判断や、個人情報保護法との整理もあわせて扱います(法務コンサルティング)。

まずはご相談ください

ご相談内容をお聞きし、最適なサービスをご提案いたします。

お問合せはこちら