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中小企業庁は2025年8月5日、中小M&A市場改革プランを公表しました。同年4月に設置された「中小M&A市場の改革に向けた検討会」の中間とりまとめにあたるものです。中小M&Aの件数が増加する一方で、支援機関の質や不適切な譲り受け側の存在が指摘されている状況を踏まえ、市場の健全化に向けた施策の方向性を示すものです。
当事務所も中小企業庁のM&A支援機関として登録しており、プランが示す方向性は、支援を受ける側だけでなく、支援する側である当事務所自身にも向けられたものです。

施策の3つの軸
プランが問題としているのは、市場の拡大に伴って生じた質のばらつきです。M&A支援機関が増加した結果その支援の質が十分とは言えないという声が聞かれるようになったこと、譲り渡し側の経営者保証が解除されないまま現預金を引き抜くといった不適切な譲り受け側の存在が指摘されていることを踏まえ、譲り渡し側・中小M&A市場・譲り受け側という3つの軸で施策が整理されています。
譲り渡し側
実務に直結するのは、経営者保証と財務状況の精査です。
経営者保証については、クロージング前に譲り受け側が金融機関等から解除等に関する意向表明を得ることや、クロージング時に譲り受け側による融資の借換えを行うといった手段によって、譲り渡し側の不安の解消を図る実務を浸透させるべきとされています。株式を譲渡したのに保証だけが残るという事態は、中小M&Aで繰り返し問題になってきた点です。
財務状況の精査については、M&Aを検討する前の段階から財務状況を精緻に把握する必要があるとされ、プランは次の観点を挙げています。
- 損益計算書の観点からは、一時的な損益を控除した正常収益力を考慮し、M&Aにより不要となるオーナーコスト(役員報酬等)の有無等を検証する
- 貸借対照表の観点からは、資産の時価評価や、現金相当物(キャッシュライクアイテム)・負債相当物(デットライクアイテム)を精査する
- 事業性を評価する観点から、ビジネスモデルや商流等の非財務面での事業の特徴も把握する
はじめの2つは、財務デューデリジェンスで典型的に行われる分析です。プランは、公認会計士や税理士等の専門家によるこうした精査の実施を促進すべきであるとしています。従来は買い手側のデューデリジェンスで確認されることが多かった項目について、譲り渡し側でもM&Aの検討前から把握しておく流れを促すものです。
中小M&A市場
手数料については、算定方法が支援機関によって異なるため、当事者が算定の基礎まで理解して比較することが容易ではないと指摘されています。そのうえで、譲渡価額が同一である場合に手数料を引いた受取額を支援機関ごとに比較できるように可視化するなど、比較可能性を高めて公正な競争を促す方向が示されています。
あわせて、M&Aアドバイザー個人の知識・スキルに係る資格制度の創設が挙げられています。これまでの施策が支援機関という組織単位の規律に向けられてきたのに対し、アドバイザー個人の知識・能力や倫理観がM&Aの成否に大きく影響することを踏まえ、組織と個人の両輪で質を担保するという考え方です。M&Aの業務範囲は広く、ビジネス・財務・税務・法務にわたる知識が求められるとされています。
譲り受け側
不適切な買い手の排除に向けた取組は、中小M&Aガイドライン第3版での対応の追記や、そうした買い手との取引を支援した登録支援機関への注意の発出として既に進められています。これに対し今後の施策は、優良な買い手を増やす方向で組まれています。起業家精神や経営能力が高い買い手への支援が不足しているとの課題認識から、複数回のM&Aによるグループ化の推進、小規模案件や個人の承継を支援するファンドへの支援強化、PMI支援、支援機関による買い手の掘り起しが挙げられています。
実務への示唆
譲り渡しを検討する経営者にとっては、M&Aの検討に入る前に自社の財務状況を把握しておくことが重要です。正常収益力やオーナーコストの調整を経た数値は譲渡価額の見通しを持つための出発点であり、これがないまま交渉に入れば、提示された価格の妥当性を判断できません。支援機関を選ぶ場面でも、手数料の水準だけでなく、その算定の基礎と提供される業務の内容を対比して確認する必要があります。
譲り受ける側にとっては、経営者保証の扱いが交渉の早い段階で論点になります。クロージング前に金融機関の意向を確認しておくという実務が定着すれば、後から解除を求める交渉より進めやすくなります。
支援機関の側からみれば、プランが求めているのは、業務の内容と手数料を依頼者が比較できる形で示すこと、そしてアドバイザー個人の知識と倫理観を担保することです。組織として登録制度の規律に従うだけでなく、個々の案件で誰がどの範囲を担うのかを明示することが、質の担保の実質にあたります。
ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス
当事務所では、M&A支援において、財務・税務・法務のデューデリジェンスから契約の作成・レビューまでに対応しています。プランが挙げる正常収益力やオーナーコストの調整、キャッシュライクアイテム・デットライクアイテムの精査は、財務デューデリジェンスで扱う分析そのものです。
譲り渡しを検討する段階での財務状況の把握(会計コンサルティング)や、経営者保証の解除を含む条件の整理(法務コンサルティング)も、あわせて扱います。当事務所には弁護士・公認会計士の双方の資格を持つメンバーが在籍しており、財務と法務の双方に跨がる論点を分断なく検討できます。
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