ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年9月22日 更新: 2026年7月6日

スキャナ保存と優良な電子帳簿

目次

電子帳簿保存法は帳簿書類の電子保存を3つの制度に分けており、このうち電子取引データ保存は、申告所得税・法人税の保存義務者に義務づけられています(同法7条)。残る電子帳簿等保存とスキャナ保存は任意で、手間に見合うかを会社ごとに判断することになります。

スキャナ保存では紙を廃棄でき、優良な電子帳簿では過少申告加算税の軽減と、個人事業者であれば青色申告特別控除の上乗せを受けられます。スキャナ保存は課税期間の途中から書類の種類ごとに始められますが、優良な電子帳簿は課税期間の初日から要件を満たしている必要があります。

参考記事: 電子取引データの保存義務と実務対応(2024年1月9日)

スキャナ保存

スキャナ保存は、取引の相手先から受け取った書類や自己が作成した書類の写しを、書面に代えてスキャンしたデータで保存することを認める制度です(電子帳簿保存法4条3項)。

対象となる書類

スキャナ保存の対象は、決算関係書類を除く国税関係書類であり、棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの計算・整理・決算関係書類は含まれません。売上伝票などの伝票類も、所得税法施行規則・法人税法施行規則が保存を求める書類に当たらないため、対象外です。

対象書類は、資金や物の流れに直結するかどうかによって重要書類と一般書類に分かれ、保存の要件も異なります。契約書、領収書、請求書、納品書、預金通帳、約束手形などが重要書類に、見積書、注文書、検収書、入庫報告書などが一般書類に当たります。同じ納品書でも、受領したものは重要書類、自社が作成した写しは一般書類に区分されます。

保存の要件

真実性と可視性を確保するための要件が定められています(電子帳簿保存法施行規則2条)。

要件重要書類一般書類
入力期間の制限
解像度
カラー画像グレースケール可
タイムスタンプ
ヴァージョン管理
帳簿との関連性
見読可能装置カラー不要
システム概要書等
検索機能
表1:スキャナ保存の要件(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和7年6月)をもとに当事務所作成)

解像度は200dpi以上、カラー画像は赤・緑・青それぞれ256階調以上とする必要があります。スキャナは専用機に限られず、スマートフォンやデジタルカメラも入力装置に該当すれば使用できます(国税庁一問一答【スキャナ保存関係】(令和7年6月))。入力期間内に記録事項を入力したことを確認できるシステムで保存していれば、タイムスタンプに代えてシステムによる確認を用いることができます。

入力期間については、書類の受領等の後「速やかに」入力する方法のほか、業務の処理に係る通常の期間を経過した後に速やかに入力する方法が認められています。「速やかに」はおおむね7営業日以内とされ(取扱通達4-17)、「業務の処理に係る通常の期間」は最長2か月の業務処理サイクルとして取り扱われます(同4-18)。後者による場合の入力期限は、書類の受領等から最長で2か月とおおむね7営業日以内です。この方式をとるには、週次・月次といった周期を事務の処理に関する規程で定めておくことが前提になります。一般書類には入力期間の制限がなく、適時に入力すれば足ります。

令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後に保存する書類については3つの要件が撤廃されました。撤廃された要件は、読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存、記録事項の入力者等に関する情報の確認、帳簿との相互関連性の確保のうち一般書類に係る部分です。相互関連性の確保は、重要書類だけに求められています。

紙原本の廃棄

令和4年1月1日以後に保存する書類は、スキャナで読み取り、記録事項と紙の記載事項が同等であることを確認した後であれば、紙を即時に廃棄して差し支えありません。入力期間を経過した場合はデータとあわせて紙も保存する必要があるため、紙を廃棄できるかどうかは、業務サイクルを守って入力できるかどうかに左右されます。

収入印紙を貼付した課税文書も、貼付後に読み取って同等確認をすれば廃棄できます。印紙税の過誤納還付を受けるには原本の提示が必要であり、スキャナデータや出力した書面では還付を受けられません。

※ スキャナ保存したデータと電子取引データについては、記録された事項に隠蔽・仮装があった場合、重加算税が10%加重されます(電子帳簿保存法8条5項)。

優良な電子帳簿

優良な電子帳簿は、自己が作成する帳簿を電子データのまま保存する電子帳簿等保存のうち、信頼性の高いものとして区分された類型です。要件を満たしたうえで届出を行うと、その帳簿に記録された事項に関する過少申告加算税が5%軽減されます(電子帳簿保存法8条4項)。

国税庁が公表している届出書の提出件数は、制度の施行日(令和4年1月1日)からの累計で38,479件、うち法人は8,201件です(令和6年6月末時点)。利用が広がりにくい一因として、対象帳簿の範囲と備付けの開始時期に関する制約が考えられます。

保存の要件

次の要件を満たす必要があります(施行規則5条)。

  • 記録事項の訂正・削除を行った場合に、その事実と内容を確認できること
  • 通常の業務処理期間を経過した後に入力した場合に、その事実を確認できること
  • 帳簿間で記録事項の関連性を確認できるようにしておくこと
  • 取引年月日・取引金額・取引先を条件として検索でき、日付・金額は範囲指定、2以上の項目は組合せで条件を設定できること

税務調査でデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、検索機能のうち範囲指定と組合せの機能は不要です。システムの概要書等と見読可能装置の備付けについては、電子帳簿に共通する要件として、優良な電子帳簿でも満たす必要があります。

対象となる帳簿

軽減措置の対象は、仕訳帳と総勘定元帳のほか、所得税法施行規則58条1項・法人税法施行規則54条にいう「その他必要な帳簿」(売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳など)を含み、特例国税関係帳簿と呼ばれます。消費税について適用を受ける場合は、消費税法に基づく一定の帳簿も対象です。適用を受けようとする税目について、このうち1つでも要件を欠くと軽減措置を受けられません。事業部や支店ごとに作成している帳簿も同じです。

もっとも、社内で作成している全ての帳簿が対象になるわけではありません。国税庁は「すべての帳簿について、要件を満たす必要があるのでしょうか」という問いに「いいえ、一定の帳簿に限定されています」と答えています(優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月))。対象かどうかは帳簿の名称ではなく、税法上必要な記載事項をその帳簿で記録・管理しているかで決まり、在庫管理のための商品有高帳や、同じ内容を重複して控えているノート・表計算ソフトは通常含まれません。要件を満たすかどうかも、ソフトの種類ではなく、訂正削除の履歴や検索機能で判断されます。帳簿が複数の会計ソフトに分かれていても、それぞれが要件を満たし、帳簿間の関連性を確認できれば適用を受けられます(一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和7年6月))。

青色申告特別控除では対象となる帳簿の範囲が異なり、補助簿までは求められません。個人事業者が55万円の控除を65万円にするには、通常の要件に加えて、その年分の事業に係る仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件に従って保存したうえで届出書を提出するか、期限までにe-Taxで確定申告書等を送信するかのいずれかが必要です(租税特別措置法25条の2第4項、同法施行規則9条の6第2項・5項)。

2026.7.6 追記: 令和8年度税制改正により、令和9年分以後の所得税については、青色申告特別控除の区分が一段ずつ繰り上がります(所得税法等の一部を改正する法律は令和8年3月31日に成立・公布)。現行の55万円の控除は、確定申告書・貸借対照表・損益計算書等の提出を提出期限までにe-Taxで行うことを適用要件に加えたうえで、控除額が65万円となります(財務省「令和8年度税制改正の大綱」)。現行の65万円の控除は、この電子申告の要件を満たす者が、その年分の事業に係る仕訳帳と総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たす保存等を行うか、デジタルシームレス保存(請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組み)の要件を満たすことを要件として、控除額が75万円となります(国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」(令和8年6月))。優良な電子帳簿は、65万円の控除を受けるための選択肢の一つから、75万円の控除を受けるための要件へと位置づけが変わります。

届出と備付けの時期

届出書は「あらかじめ」提出することとされていますが、適用を受けようとする国税の法定申告期限までに提出があれば、あらかじめ提出があったものとして取り扱われます(取扱通達8-5)。帳簿は課税期間の初日から要件を満たして備え付けている必要があり、期中に集めた記録から課税期間の終了後に作り直しても、要件を満たしたことにはなりません。既存の事業で優良な電子帳簿に切り替える場合は、課税期間の区切りに合わせることになります。ただし、不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務のいずれも行っていなかった個人が年の中途に業務を開始した場合は、その業務開始の日から要件を満たしていれば、その年から適用を受けられます。

※ 税額の計算の基礎となるべき事実に隠蔽・仮装があった場合は、優良な電子帳簿であっても軽減措置の適用はありません(電子帳簿保存法8条4項ただし書)。帳簿に記録された事項以外の事実に隠蔽・仮装があった場合も同じです(取扱通達8-4)。

導入を検討する順序

スキャナ保存の導入では、まず入力期間の扱いを決めます。業務サイクルに沿って入力するなら事務の処理に関する規程が前提で、処理が遅れた書類の担当者と処理時期まで決めておかなければ、その分の紙が残ります。そこまで固められないのであれば、入力期間の制限がない一般書類から始めるほうが確実です。スキャナ保存は書類の種類ごとに適用でき、課税期間の途中からでも開始できます。ただし一般書類には、作成・保存の事務手続を明らかにした書類(責任者を定めたもの)の備付けが必要です(施行規則2条7項)。

優良な電子帳簿の導入では、会計ソフトの機能を比較する前に、自社で作成している帳簿を洗い出し、特例国税関係帳簿に当たるものを特定したうえで、それぞれの作成環境を確認します。固定資産台帳や売掛帳を別のソフトで作成している場合は、そこで要件を満たせるかどうかが分かれ目です。会計ソフトへの移行その他の方法でも満たせないのであれば、軽減措置の適用を見送り、優良以外の電子帳簿等保存にとどめる判断になります。個人事業者が65万円の青色申告特別控除だけを目的とするのであれば、仕訳帳と総勘定元帳で足ります。

ソフトが要件を満たしているかどうかは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証が手がかりになります。スキャナ保存ソフトと電子帳簿ソフト(優良な電子帳簿)で認証の区分が分かれており、国税庁もJIIMA認証情報リストを案内しています。ただし認証が確認しているのは機能要件であり、初期設定が機能要件を満たしていない場合や、設定の変更によって満たさなくなる場合があります。システム関係書類の備付けや、優良な電子帳簿であれば届出書の提出と課税期間の初日からの備付けは、いずれも利用者の側で満たすものです。

優良な電子帳簿の届出書は法定申告期限まで提出できますが、帳簿は課税期間の初日から要件を満たしている必要があり、後から遡って整えることができません。導入を決めた場合は、次の課税期間の初日に間に合うよう体制を整えることになります。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、管理部門DX支援において、スキャナ保存や優良な電子帳簿の導入可否の検討に対応しています。対象となる帳簿・書類の洗い出し、保存要件と現行システムの機能の照合、事務手続関係書類や業務サイクルを定める規程の整備を扱います(規程・ポリシー整備)。届出書の提出や税務調査を見据えた保存状況の確認も、あわせて扱います(税務顧問・申告)。

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