ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年4月14日

生成AIサービス利用規約の確認事項

目次

文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)は、AI利用者が事前に確認しておくべき情報の一つとして、利用しようとするサービスの利用規約等を挙げています。

③ AIシステム・サービスの利用規約等:AIシステム・サービスにおいては、利用規約等の当該システム・サービスの利用上のルールにおいて、著作権侵害のおそれがある利用方法を禁止又は制限している場合があります(他人の著作物を入力することの禁止等)。あらかじめ、利用しようとするAIシステム・サービスの利用規約等を確認し、これに従って利用することが必要です。
出典: 文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」18頁

ただし、規約のどこを見るのかまでは示されておらず、規程に「利用規約を確認すること」と書いても、確認項目が決まっていなければ運用されません。生成AIの著作権リスクと社内規程の設計では社内規程の構成を扱いました。実際、当事務所が利用規程の整備に関与する場面でも、社内で使ってよいサービスを決める段階で、確認項目をどう定めるかが問題になります。

本記事では、利用規約等のうち著作権・学習利用・生成物の取扱いに関わる部分を扱います。主要なサービスの規約に共通する条項をもとに、確認すべき項目を次の6つに整理しました。

  1. 適用される規約の特定では、消費者向け・法人向け・API向けのうち、自社に適用される文書はどれかを確認する
  2. 入力データの学習利用では、入力した内容がモデルの学習に使われるかを確認する
  3. 生成物の権利帰属では、生成物の権利が誰に帰属すると定められているかを確認する
  4. 生成物の一意性では、他の利用者に同じ出力が返ることを規約が想定しているかを確認する
  5. 著作権補償の射程では、第三者から権利主張を受けた場合にベンダーが防御するか、その条件は何かを確認する
  6. 準拠法と改定では、どの言語・どの国の法律が基準になり、条件はいつ変わるかを確認する

各項目では実務上の論点を示したうえで、主要なサービスの規約に実際にどのような記載があるかを確認します。

※本記事は、各社の利用規約について本文中に示した版に基づいています。規約は各社が随時改定するため、実際の検討にあたっては、その時点で公開されている最新版をご確認ください。

適用される規約の特定

実務上の論点

利用の可否を決める単位は、サービス名ではなく契約形態とプランです。同じ社名・同じモデルでも、消費者向けと法人向けでは、後述する学習利用や補償の条件が異なるためです。「このサービスは利用可」とサービス名だけで可否を示したリストは、判断の根拠になりません。

法人契約で交渉した条件は、その契約の下での利用にしか及びません。会社が把握していない個人アカウントでの業務利用が残っていれば、規約を検討してもその利用には条件が適用されません。規約の確認は、利用実態の棚卸しとあわせて行うことになります。

主要サービスの記載例

主要なベンダーは、消費者向け・法人向け・API向けで別の規約を並行して公開しています。Anthropic であれば、個人利用にはConsumer Terms of Serviceが、法人契約にはCommercial Terms of Serviceが適用されます。OpenAI も、個人向けのTerms of use(2026年1月1日発効)とは別に、事業者向けのServices Agreement(2026年1月1日発効)を公開しています。

自社に適用される文書は、契約主体やプランに加え、画面から使うのかAPIから使うのかによって変わります。適用される文書を特定せずに条文を読んでも、以下の項目は検討できません。

入力データの学習利用

実務上の論点

入力した内容が学習に使われるかどうかは、契約形態によって扱いが分かれます。利用者の設定で学習から除外するオプトアウト型と、契約上そもそも学習しない形態とでは、管理に要する手間も全く異なります。

オプトアウト型では、各利用者が各アカウントで設定を維持し、入社・退職・端末追加・アカウント再作成のたびに確認しなければなりません。設定が戻っていないことを会社が継続的に検証する仕組みまで用意しなければ、実効性を担保できません。契約上そもそも学習されない形態を選ぶほうが、管理コストは小さく済みます。

個人情報を入力する場合には、著作権とは別に個人情報保護法の検討が加わります。個人情報保護委員会は「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)で、個人情報取扱事業者による個人情報を含むプロンプトの入力について注意を促しています。入力が、特定した利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。入力した個人データが応答結果の生成以外の目的で取り扱われないことの確認にも言及されており、学習利用に関する規約の条項は、その確認の材料になります。

主要サービスの記載例

消費者向けの規約では、学習に使うことを原則とし、利用者側の設定で除外できるという構成が一般的です。Anthropic のConsumer Terms of Service(2025年10月8日発効)は、アカウント設定でオプトアウトしない限りモデルの学習に用いる旨を定めています。ただし、フィードバックとして送った内容や、安全性の確認のためにフラグが付された内容は、オプトアウト後も利用されうるとされています。オプトアウトの設定では、こうした例外の範囲もあわせて確認します。OpenAI のTerms of use(2026年1月1日発効)も、学習に使われたくない場合は設定で除外できると記載しています。

法人向けでは学習しないことが原則になりますが、その定めを置く文書はサービスによって異なります。

Anthropic は、Commercial Terms of Service(2025年6月17日発効)の契約条項そのものに、学習しない旨を定めています。

Anthropic may not train models on Customer Content from Services.
出典: Anthropic「Commercial Terms of Service」

OpenAI は、ChatGPT Business(旧 ChatGPT Team)・Enterprise および API について、既定では入力・出力をモデルの学習に用いないとしています。API では利用者が明示的にオプトインした場合に限り学習の対象となり、何もしなければ対象外です。「How your data is used to improve model performance」で、この扱いを説明しています。

Google も、Gemini for Google Cloud のドキュメントで、入力や生成された応答を学習に使わない旨を明記しています。

Gemini for Google Cloud doesn’t use your prompts or generated responses for training or fine-tuning our underlying models.
出典: Google Cloud「How Gemini for Google Cloud works」

同じ「学習しない」という定めでも、契約条項に置かれる場合と、方針の説明ページや製品ドキュメントに置かれる場合があります。もっとも、後者が契約上の意味を持たないわけではありません。規約がポリシーやドキュメントを参照して契約内容に組み込む構造は珍しくなく、組み込まれた文書も契約の一部になります。

社内審査では、記載の有無に加え、文書が契約に組み込まれているか、文書間の優先順位や改訂手続はどう定められているかまで確認する必要があります。契約に組み込まれていない説明ページであれば、ベンダーが一方的に書き換えたときに拠り所を失います。

生成物の権利帰属

実務上の論点

規約は権利の帰属先を決めるだけで、権利の発生を決めるものではありません。

前掲記事で整理したとおり、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、人の創作意図と創作的寄与が認められない生成物は著作物に該当しないと整理しています。規約に「あなたのものです」と書かれていても、著作物性が認められなければ、少なくとも著作権については移転の対象となる権利が発生しません。

生成物の独占的な利用を前提とする事業計画や、著作権譲渡を前提とする取引先との条項は、規約の記載だけでは組み立てられません。権利が生じるかどうかは、人がどこまで表現を決めたかという別の判断に委ねられます。

主要サービスの記載例

主要なサービスは、生成物の権利が利用者に帰属することを明記しています。Anthropic のCommercial Terms of Serviceは、入力の権利を顧客が保持し、出力を顧客が所有すると定めています。

Customer (a) retains all rights to its Inputs, and (b) owns its Outputs.
出典: Anthropic「Commercial Terms of Service」

OpenAI のTerms of useも、同じ内容を定めています。

帰属の定めには、見落とされやすい留保が重ねられており、Anthropic の Consumer Terms では2文のなかに4つの条件が入っています。

As between you and Anthropic, and to the extent permitted by applicable law, you retain any right, title, and interest that you have in the Inputs you submit. Subject to your compliance with our Terms, we assign to you all of our right, title, and interest—if any—in Outputs.
出典: Anthropic「Consumer Terms of Service」

  • As between you and Anthropic は、ベンダーと利用者の間の相対的な取決めにすぎず、第三者との関係で権利を保証するものではないことを示す
  • to the extent permitted by applicable law は、準拠法が認める範囲に限られることを示す
  • Subject to your compliance with our Terms は、規約に違反していれば譲渡の前提が崩れることを示す
  • if any は、そもそも権利が存在する場合に限って譲渡の対象になることを示す

「if any」は前段の著作物性の議論に直結し、ベンダーが権利を主張しないとの約束も、生成物に著作権が発生することまで保証するものではありません。OpenAI のTerms of useも「all its right, title, and interest, if any, in and to Output」と同じ表現を用いています。

生成物の一意性

実務上の論点

同種の指示を与えれば、他者にも似た出力が返る可能性があります。用途によっては、この点が結論を左右します。ロゴ、キャッチコピー、商品名、デザインは、他者が同じものを使わないことに価値がある成果物です。こうした成果物は、生成AIから得たというだけでは事実上の独自性が担保されません。

独占性が必要な成果物には、AI生成物をそのまま最終形としない、人手による作り込みの工程を挟むといった対応が必要になります。あるいは、事前に既存の使用状況を調査するなど、運用上の切り分けが必要です。用途ごとに結論が変わるため、社内ルールは「生成AIの利用可否」ではなく「どの用途にどの条件で使えるか」という形で書くほうが機能します。

主要サービスの記載例

出力が一意でない可能性を、規約に明記しているサービスもあります。

Due to the nature of our Services and artificial intelligence generally, output may not be unique and other users may receive similar output from our Services.
出典: OpenAI「Terms of use」

著作権補償の射程

実務上の論点

第三者から権利侵害の主張を受けた利用者を守るため、ベンダーが防御と補償の2つの義務を負う条項を置くサービスがあります。

  • 防御(defend)は、第三者からの請求や訴訟への対応を引き受ける義務。誰が弁護士を選任し、訴訟や和解を主導するかは条項によって異なる
  • 補償(indemnify)は、判決・仲裁判断・和解等によって生じた金額を負担する義務。対象となる金額の範囲や弁護士費用の扱いは条項によって異なる

いずれも、負担の対象がどこまで及ぶか、誰が防御を主導するか、利用者に何が求められるかは、条項によって異なります。

複数のベンダーの補償条項には、次のような除外事由や条件が繰り返し現れます。具体的な内容はサービスごとに異なるため、自社の利用に当てはまるかどうかは個別の検討になります。

  1. 対象が有償プランや指定サービスに限られるため、無料利用や個人向けプランは対象外とされることが多い
  2. 安全機能の有効化や評価の実施が条件になるため、フィルタや出典表示を切ると外れる場合がある
  3. 商標権・特許権が除外または別扱いになるため、著作権と同列に守られるとは限らない
  4. 改変や他技術との組合せが除外事由になるため、生成物に手を入れた後の成果物が当然に対象になるとは限らない

補償条項は無条件の保険ではなく、補償の付いたサービスを選定するだけでは足りません。条件を満たす設定を維持し、その事実を後から示せる記録を残す運用まで含めて初めて意味を持ちます。設定の変更履歴や評価の結果を残していなければ、クレームを受けたときに条件を満たしていたことを立証できません。

これらはあくまで民事上の防御に関する当事者間の取決めであり、補償の有無と、その利用が著作権法上適法かどうかは別の問題です。

主要サービスの記載例

Anthropic のCommercial Terms of Serviceは、有償の利用および当該利用によって生成された出力が第三者の知的財産権を侵害するとの主張について、顧客を防御し、生じた金額を負担する旨を定めています。

負担の対象となるのは、裁判所の判決、仲裁判断、および Anthropic が承認した和解によって第三者に認められた金額です。顧客が独自に成立させた和解は当然には含まれず、弁護士費用も補償の対象として明示されてはいません。この切り分けに対応して、同規約は利用者に対し、請求を受けたことの速やかな通知と、防御への合理的な協力を求めています。一方、弁護士の選任・訴訟戦略・和解交渉は Anthropic が主導すると定めており、早期に和解して解決したい場合でも、その判断は利用者の手にありません。

補償の対象からは、顧客が出力に加えた改変、Anthropic 以外の技術との組合せ、他者の権利を侵害する態様での利用が除外されています。出力に含まれる特許発明の実施や、出力の商業使用に伴う商標権侵害も対象外です。

同規約は、当事者が負う賠償額を「直近12か月に顧客が支払った利用料」までとする一般的な上限条項を置いています。補償義務はこの上限の対象から除かれており、第三者からの権利侵害の主張で高額の支払いが生じても、Anthropic の負担は支払済みの利用料の範囲に限定されません。補償条項の評価では、条項の有無に加え、補償義務が上限条項の対象から除かれているかどうかまで確認する必要があります。

Microsoft は、Customer Copyright Commitment による防御を受けるための条件を、専用のページで具体的に定めています。Azure OpenAI 等では、次の実装が条件とされています。

  • 著作権侵害を防ぐよう指示する内容を、システム側のプロンプトに組み込んでおくこと
  • 既存の著作物がそのまま出力されるのを検知・遮断する機能を、有効にしておくこと
  • 第三者のコンテンツが出力されていないかを検証し、その結果と対応の記録を保持して、請求時に Microsoft へ提出できるようにしておくこと

有効にすべき機能と具体的な設定は、モデルと用途ごとに同ページで定められています。同ページには、顧客が防御を求める際に、これらの要件を満たしていたことを立証する必要がある旨も明記されています。

Google Cloud は、学習データに関する補償と生成物に関する補償を分けて設けています。対象のサービスはGenerative AI Indemnified Servicesに列挙されています。同ページによれば、補償義務の内容はService Specific Termsの「Additional Google Indemnification Obligations」に置かれています。生成物側の補償について、Google は利用者側の行為を条件として挙げています。

this indemnity only applies if you didn’t try to intentionally create or use generated output to infringe the rights of others, and similarly, are using existing and emerging tools, for example to cite sources to help use generated output responsibly.
出典: Google Cloud「Protecting customers with generative AI indemnification」(2023年10月13日)

侵害を意図していないことと、出典表示等の機能を使っていることが前提になるという整理です。

準拠法と改定

実務上の論点

海外ベンダーの規約では、契約主体や利用地域によって、英語を正文とし、日本以外の法律を準拠法とする場合が少なくありません。日本語版がある場合でも、解釈が分かれたときは英語版が優先する旨が定められていることが多いため、社内審査は英語の条文に当たって行います。

規約の条件は固定ではなく、利用開始時点で満たしていた条件も、その後の改定で満たさなくなることがあります。稟議や審査を行った時点の規約の版を保存し、いつの版に基づいて判断したかを記録しなければ、数年後に問題が生じたときに当時の条件を再現できません。規約改定の通知を受け取る窓口に加え、再確認の契機も、改定通知の受領時、新たな機能の利用開始時、年次の見直し時と定めておきます。

主要サービスの記載例

主要な規約には効力発生日が付されており、前掲の Anthropic のCommercial Terms of Serviceは2025年6月17日の版として公表されています。Consumer Terms of Serviceは2025年10月8日、OpenAI のTerms of useは2026年1月1日の版です。Microsoft が定める前掲の条件にも項目ごとに適用開始日が付されており、共通の要件は2023年12月1日から適用されています。新たな条件が追加された場合は、公表から6か月以内に実装しなければ補償の対象から外れるとされています。

Google Cloud のService Specific Termsは改定日が明示されているため、判断の根拠とした版を記録に残しやすい形です。

前掲の学習利用のように、根拠が方針の説明ページや製品ドキュメントに置かれている場合は、版の日付が示されないことがあります。参照した時点の内容を自社側で保存しておかなければ再現できないため、依拠する文書に応じて記録の取り方を変える必要があります。

社内ルールへの落とし込み

生成AIの利用規程で規約に関して定めるべき事項は、以上の確認事項を踏まえて次のように整理できます。

  • 可否の単位はサービス名ではなく契約形態とプランとし、その単位で許諾する
  • 入力の制限として、機密情報・個人情報を入力してよい契約形態を限定し、オプトアウト型のプランに依存しない
  • 用途の切り分けとして、社外公開物、独占性が必要な成果物、社内限りの利用で条件を分ける
  • 補償を前提とする場合の条件維持のため、有効にしておくべき設定を定め、条件を満たしていた記録を保管する
  • 再確認の契機は、規約改定時・新機能導入時・年次の見直しとする

これらの事項は、著作権法の解釈だけでは決まらず、自社がどのサービスをどう使うかという事実関係と組み合わせて初めて結論が出ます。規約の確認を担当部署の判断に委ねると結論が部署ごとに異なるため、運用を揃えるには、確認項目を規程または様式の形で固定しておくことが有効です。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、AIガバナンス構築において、生成AIの利用実態の棚卸しと、利用するサービスの選定基準の策定に対応しています。利用規程・手順書への落とし込みまで扱っています(規程・ポリシー整備)。AIモデルの開発を含む技術的な実務を扱っているため、コンテンツフィルタの設定やAPIの利用形態といった実装面まで踏み込んで検討します。

海外ベンダーの規約の検討や、取引先との間で生成物の権利帰属・利用条件を定める場面にも対応しています(契約書作成・レビュー)。個別の論点について見解を示す必要がある場合は、法律意見書の作成を扱っています。

まずはご相談ください

ご相談内容をお聞きし、最適なサービスをご提案いたします。

お問合せはこちら