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オフィスの移転にあわせて会社の本店を移す場合、賃貸借契約や引越しの段取りに目が行きがちですが、会社法上の決議・登記と、移転後の各種届出も並行して進める必要があります。本記事では、株式会社の本店移転に必要な手続を、決議・登記・届出の順に整理します。
定款の確認が出発点
本店移転で最初に確認するのは、移転先の住所ではなく自社の定款です。本店の所在地は定款の記載事項であり(会社法27条3号)、実務では「当会社は、本店を東京都品川区に置く」のように、最小行政区画(市区町村、東京23区では特別区)までを記載するのが通例です。
移転先がこの記載の範囲内(同一市区町村内)であれば、定款変更は不要です。具体的な所在場所と移転時期を、取締役会(取締役会非設置会社では取締役の過半数)で決定すれば足ります。
一方、市区町村をまたいで移転する場合は定款の変更が必要になり、株主総会の特別決議を経ることになります。
管轄内移転と管轄外移転
登記の面では、移転先が同じ法務局の管轄内かどうかで手続が分かれます。
管轄内の移転であれば、申請は1件で、登録免許税は3万円です。管轄をまたぐ移転では、旧所在地と新所在地の双方について登記が必要になるため申請書は2通となり、登録免許税は各3万円の計6万円です。申請は旧所在地を管轄する法務局にまとめて提出し、旧管轄を経由して新管轄に送られます(経由申請)。印鑑については、以前は管轄外移転の際に新管轄へ印鑑届書を再提出する必要がありましたが、2025年4月21日以降は印鑑記録が旧管轄から新管轄へ移送されるため、改めて提出する必要はありません(法務省)。ただし印鑑カードは引き継がれないため、登記完了後に新管轄で印鑑カードの交付を請求します。
なお、定款変更の要否(市区町村をまたぐか)と管轄の内外(法務局をまたぐか)は別の判断です。市区町村をまたいで定款変更が必要になる場合でも、移転の前後が同一の法務局の管轄であれば、登記上は管轄内移転として扱われます。移転先が決まったら、法務局ウェブサイトで移転先を管轄する法務局を確認します。
登記申請の期限は、移転の日から2週間以内です(会社法915条1項)。決議で定めた移転予定日ではなく、実際に本店を移転した日が登記上の移転日となり起算点になるため、引越しの実施日と決議・申請のスケジュールを揃えておく必要があります。
登記申請に必要な書類
登記申請書のほかに添付する書類は、定款変更の要否に応じて次のとおりです。
同一市区町村内の移転(定款変更なし)
- 取締役会議事録(取締役会非設置会社では、取締役の過半数の一致を証する書面)
市区町村をまたぐ移転(定款変更あり)
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 具体的な所在場所と移転時期を取締役会等で定めた場合は、その議事録または決定書
このほか、司法書士等に申請を委任する場合は委任状を添付します。定款そのものの添付は求められません。管轄外移転では、これらに加えて申請書が新旧各1通となります(印鑑カードの交付請求は登記完了後に行います)。書式は法務局の申請書様式ページに記載例つきで公開されています。
登記の後に続く届出
本店移転の手続は登記で終わりません。移転後の届出には短い期限のものが多く、事前に一覧にしておくのが確実です。
| 届出先 | 主な届出 | 期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 異動届出書(異動前の所轄へ) | 異動後速やかに |
| 税務署 | 給与支払事務所等の移転届(該当する場合) | 移転から1か月以内 |
| 都道府県・市区町村 | 法人住民税・事業税の異動届 | 自治体の定めによる |
| 年金事務所 | 適用事業所所在地・名称変更届 | 変更から5日以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険名称・所在地等変更届 | 変更から10日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更から10日以内 |
税務署への異動届出書は、現在は異動前の納税地の所轄税務署に提出すれば足り、異動後の税務署への提出は不要です。法人番号は移転によって変わりません。
このほか、許認可を受けている事業では各業法上の変更届が必要です。宅地建物取引業や貸金業のように営業所の所在が許認可の内容に関わる事業では、届出だけでなく要件への影響も生じうるため、移転計画の段階で確認しておくべき事項になります。銀行・主要な取引先への通知や、契約書・請求書・ウェブサイトの表記の更新も漏れがちです。
ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス
当事務所では、登記申請において、本店移転登記の申請に対応しています。定款の記載と決議手続の確認、移転後の届出の洗い出しといった周辺の整理も、あわせて扱います(法務コンサルティング)。
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