ロジットパートナーズ法律会計事務所

2026年6月16日

定時株主総会後の役員変更登記

目次

3月期決算の会社では、6月に定時株主総会が集中します。総会で取締役や監査役の選任(再任を含む)を行った場合、会社は2週間以内に役員変更の登記を申請する必要があります。本記事では、任期の数え方と登記の期限、必要になる書類、そして登記を放置した場合のリスクを整理します。

役員の任期と「重任」

取締役の任期は、原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第332条第1項)。監査役は同じ枠組みで4年です(第336条第1項)。3月期決算の会社で任期2年の取締役であれば、選任から2年後の6月の定時株主総会の終結時に任期が満了します。

任期満了と同時に同じ人が再選されて就任する場合を、実務上「重任」と呼び、登記簿にもそのように記載されます。役員の顔ぶれが変わらなくても登記は必要になる、という点が見落とされがちです。

また、非公開会社(すべての株式に譲渡制限のある会社)では、定款の定めにより任期を最長10年まで伸長できます(第332条第2項・第336条第2項)。中小企業の多くはこれに当たり、役員変更の登記が10年に一度しか発生しないこともあります。

登記の期限と放置のリスク

役員の変更が生じたときは、2週間以内に変更の登記を申請しなければなりません(会社法第915条第1項)。期限を過ぎても登記の申請自体は受理されますが、登記を怠ったことについて、100万円以下の過料の対象となります(第976条第1号)。過料は会社ではなく代表者個人に科されます。

任期の満了に気づかず、後任者の選任決議そのものを行っていなかったという場合も同様です。この場合は、速やかに株主総会で必要な選任決議を行い、登記手続を進めることになります。なお、任期満了によって法律または定款所定の役員の員数を欠く場合には、退任した役員が後任者の就任まで役員としての権利義務を有することがあります(会社法第346条第1項)。

さらに長期間放置した場合には、より重い帰結があります。最後の登記から12年を経過した株式会社は「休眠会社」として整理作業の対象となり、法務大臣による公告から2か月以内に事業を廃止していない旨の届出または登記をしなければ、解散したものとみなされます(会社法第472条)。整理作業は近年毎年実施されています。任期を10年に伸長している会社は登記の機会自体が少ないため、任期の管理が特に重要になります。

登記に必要となる書類

必要書類は、取締役会の有無などの機関設計と、再任(重任)か新任かの別によって変わります。以下、株式会社の役員変更で典型的に用いる書類を場面ごとに整理します(商業登記法商業登記規則)。

株主総会で役員を選任した場合に通常用いるもの

  • 株主総会議事録は、選任決議を証する書面です。後述のとおり、就任承諾や退任の事実を議事録の記載で兼ねられる場合があり、総会前に記載内容を設計しておくと添付書類を減らせます
  • 株主リストは、議決権割合の上位10位までの株主か、議決権割合の合計が3分の2に達するまでの株主の、いずれか少ない方について、氏名・住所・議決権数等を記載し、代表者が証明します(商業登記規則第61条第3項)
  • 委任状は、司法書士等に申請を委任する場合に添付します

就任した役員に関するもの

  • 就任承諾書は、被選任者が総会に出席し、席上で就任を承諾した旨が議事録に記載されていれば、議事録の記載を援用することができます。援用する場合、後述の本人確認証明書との関係で、議事録に被選任者の住所の記載が必要になることがあります
  • 印鑑証明書は、取締役会を置かない会社では新任取締役の、取締役会設置会社では新任の代表取締役の、それぞれ就任承諾書の押印(個人の実印)について添付します。再任(重任)の場合は不要です
  • 本人確認証明書は、印鑑証明書を添付しない新任の取締役・監査役について添付します(商業登記規則第61条第7項)。住民票の写し、戸籍の附票のほか、運転免許証の両面コピーに本人が原本と相違ない旨を記載したものなどが使えます。これも再任の場合は不要です

代表取締役を選定した場合

  • 選定を証する書面は、取締役会設置会社では取締役会議事録、取締役会を置かない会社では、定款の定めに応じて取締役の互選書と定款、または株主総会議事録です
  • 取締役会設置会社では、代表取締役を選定した取締役会議事録に出席した取締役・監査役が個人の実印を押し、その印鑑証明書を添付するのが原則です。ただし、変更前の代表取締役が法務局に届け出ている会社実印(届出印)を議事録に押印していれば、これらは不要になります。実務では、この省略を使えるように、前任の代表取締役の出席と届出印での押印を確保しておくのが定石です
  • 取締役会を置かない会社の互選書や株主総会議事録にも、押印すべき者の範囲は異なりますが、同様の押印と印鑑証明書の規律があります

退任する役員がいる場合

  • 辞任による退任では、辞任届を添付します。法務局に印鑑を届け出ている代表取締役の辞任届には、届出印または個人の実印(この場合は印鑑証明書付き)での押印が必要です
  • 任期満了による退任では、定時株主総会の終結により任期が満了したことを、議事録の記載と、任期を伸長している場合は定款で証します

押印すべき印鑑の種類(個人の実印・会社の届出印・認印)の取り違えは、補正や再度の書類収集につながる典型例です。2週間という登記期限の中で手戻りなく進めるには、総会の招集段階から議事録の記載内容と押印の段取りを決めておくことが重要になります。

なお、登録免許税は役員変更の区分で、資本金1億円以下の会社は1万円、1億円超の会社は3万円です。

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