ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年5月12日 更新: 2025年10月6日

定期借地権の設定要件と地代の改定

目次

借地借家法は、更新のない借地関係を設定し、または一定期間の経過後の建物譲渡によって借地関係を終わらせる仕組みとして、22条から24条に3つの類型を置いています。もっとも、設定の要件を欠くと、予定した定期借地権としての効力が認められず、更新のある普通借地権の規律が適用されることになります。

更新等については9条が、建物買取請求等については16条が強行規定を置き、借地権者に不利な特約を無効としています。定期借地権は、これらの強行規定の例外として、要件を満たす場合に限り認められます。

定期借地権の設定時には契約の方式と建物の用途を確認する必要があり、契約期間中は地代の改定条項が問題になります。

参考記事: 地代増額請求について(2024年1月23日)/借地権付き建物の譲渡と裁判所の許可(2024年11月19日)

3つの類型

借地借家法22条から24条までは、定期借地権について次の3つの類型を定めています。

類型存続期間契約の方式
一般定期借地権50年以上書面(電磁的記録も可)
事業用定期借地権10年以上50年未満公正証書に限る
建物譲渡特約付借地権30年以上定めなし
表1:定期借地権の3類型(借地借家法22条〜24条をもとに当事務所作成)

一般定期借地権は、更新と建物築造による期間の延長がなく、建物買取請求もしない旨の特約を付けるものです(22条1項)。

事業用定期借地権は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、存続期間に応じて2つに分かれます。30年以上50年未満の場合は、一般定期借地権と同じく更新等を排除する特約を定めます(23条1項)。10年以上30年未満の場合は、特約によるまでもなく、更新や建物買取請求に関する規定の適用が法律上排除されます(23条2項)。

建物譲渡特約付借地権は、設定後30年以上を経過した日に建物を地主へ相当の対価で譲渡することによって、借地権を消滅させるものです(24条1項)。借地関係の終了の仕組みも類型によって異なり、前2者は期間の満了により、建物譲渡特約付借地権は建物の譲渡により終了します(国土交通省定期借地権の解説)。

方式の落とし穴

一般定期借地権の特約は「公正証書による等書面」によることを要しますが(22条1項後段)、公正証書は例示であり、書面であれば足ります。令和3年の改正で2項が設けられ、電磁的記録によったときも書面によったものとみなされることになりました。

これに対し、事業用定期借地権を設定する契約は「公正証書によってしなければならない」と定められ(23条3項)、方式が公正証書に限定されています。23条には22条2項に相当する電磁的記録の規定も置かれていません。契約の電子化が進んでも、事業用定期借地権については公正証書によることが求められます。

方式を欠くと特約は無効となり、定期借地権として設定する意図であっても普通借地権として扱われ、更新に関する規定が適用されます。存続期間が満了して契約の更新がないときは、建物買取請求を受ける可能性も残るため(13条1項)、土地の返還を前提とした事業計画は成り立たなくなります。

2025.10.6 追記: 2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化され、嘱託人の申出があり、他の嘱託人に異議がなく、公証人が相当と認めるなど所定の要件を満たす場合には、公証役場に出向かずWeb会議を利用して作成することができるようになりました(日本公証人連合会)。公正証書によることを求める23条3項自体は変わっていません。

用途の落とし穴

事業用定期借地権の対象は「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)」で(23条1項括弧書き)、店舗、事務所、倉庫、工場などが該当します。

括弧書きで居住用の建物が除かれているため、賃貸マンションや社宅は、賃貸事業として営むものであっても対象になりません。建物の一部に居住用部分がある場合も同様で、たとえば店舗に従業員の寮を併設する計画では、事業用定期借地権を設定できません。

用途の要件を満たさない契約は、方式を欠く場合と同じく特約が無効になります。事業用の建物を建てる前提で公正証書を作成しても、建物の計画に居住部分が含まれていれば、用途の要件を満たしません。

普通借地からの切替え

既存の普通借地権から定期借地権への切替えに関する相談では、更新のある借地権を、期間の満了によって確定的に終了する借地権に変更することが問題になります。

普通借地から事業用借地への切替えが争われた事例として、東京地判平成29年9月12日・平成28年(ワ)第23563号、同第31614号があります。昭和41年に期間30年で設定された借地について、平成8年、借地人が権利金2,250万円を支払ったうえで、当時の24条(現在の23条)の事業用借地権として公正証書を作成し、存続期間を20年とした事案です。期間の満了後、地主が建物の収去と土地の明渡しを求めました。

借地人側は、強行規定に反して無効だと主張しました。判決は、この場面で適用されるのは借地借家法16条であると整理したうえで、主張を退けています。強行規定が対象とするのは契約の内容が法に反して借地権者に不利な場合であり、更新がないことは法が定める事業用の定期借地権の内容そのものであって、法に反するものではないという理由です。借地人が述べていたのは締結に至った動機に属する事情であり、契約内容の問題ではないとされました。

詐欺や錯誤の主張も認められていません。判断を分けたのは公正証書の記載でした。事業用の賃借権であること、更新ができないこと、期間が満了すれば原状回復して返還することが条項として明記されており、内容を理解していなかったという主張は通らないとされています。

この事案では、切替えが強行規定に触れるとはされませんでした。争点になったのは借地権者が何を理解して合意したかであり、公正証書の記載内容が20年後の紛争で意味を持っています。

※ 一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、22条から24条までのほか、3条から8条まで、13条、17条および18条の規定も適用されません(25条)。短期間の利用であることだけを理由に一時使用と扱われるわけではなく、目的や建物の構造から判断されます。

地代の改定

定期借地権は期間が長く、一般定期借地権では50年以上に及ぶため、その間の地代をどう定めるかが、実務では最も長期にわたる検討課題となります。

地代等増減請求権は、租税その他の公課の増減、土地の価格の変動その他の経済事情の変動、近傍類似の土地の地代等との比較によって地代が不相当になったときに、契約の条件にかかわらず行使できます(11条1項)。契約で改定方法を定めていても、それだけで請求権が排除されるわけではありません。

11条1項ただし書は、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うとしています。増額しない特約は有効です。他方、減額しない旨の特約についての規定は置かれていません。最高裁も、消費者物価指数が下降しても賃料を減額しない旨の特約が付された土地の賃貸借について、11条1項は強行法規であり、この特約によってその適用を排除することはできないとしています(最判平成16年6月29日)。地主が地代の固定を望んでも、条文上、確実に固定できる範囲は、地主自身が増額を求めないことに限られます。

したがって、50年にわたって地代を固定する趣旨の条項を置いても、経済事情が変動すれば借地人から減額を求められる余地が残ります。自動改定の条項も、改定の指標と時期を定める意味はありますが、増減額請求そのものを排除する効果まではありません。もっとも、同じ判決は、特約の存在が契約締結当初の賃料額を決定する重要な要素となった事情であるときは、衡平の見地から、増減額請求の当否と相当賃料額を判断するうえで十分に考慮されるべきであるとしています。改定条項は請求を封じるものではありませんが、無意味になるわけでもありません。定期借地権の評価については、国土交通省が定期借地権及び継続賃料にかかる評価のあり方の調査として検討結果を公表しています(平成25年3月)。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、契約書作成・レビューにおいて、定期借地権設定契約の作成と内容の確認に対応しています。類型の選択、公正証書とするかどうかの検討、建物の用途が要件を満たすかの確認、地代の改定条項の設計を扱います。既存の借地契約の見直しや地代の増減額をめぐる交渉・調停・訴訟にも対応しています(法務コンサルティング争訟・紛争対応)。

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