ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年10月14日

育児・介護休業法の10月施行分と規程整備

改正育児・介護休業法のうち、2025年10月1日施行分が施行されました。柔軟な働き方を実現するための措置と、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が、事業主の義務になります。

同年4月施行分には、子の看護等休暇や所定外労働の制限の対象拡大に加え、介護離職防止のための個別周知・意向確認や雇用環境整備などが含まれていました。これに対し10月施行分は、法定の選択肢から2つ以上の措置を選び、具体的な制度として規程に落とすことが中心になります。本記事では、規程整備の観点から要点を整理します。内容は厚生労働省の育児・介護休業等に関する規則の規定例(令和7年4月1日、10月1日施行対応版)によります。

柔軟な働き方を実現するための措置

3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は次の5つから2つ以上を選択して講じる必要があります。

  1. 始業時刻等の変更
  2. テレワーク等(10日以上/月)
  3. 保育施設の設置運営等
  4. 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
  5. 短時間勤務制度

労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用します。事業主が2つ以上を用意し、その中から労働者が選ぶ、という二段構えです。

法が保障するのは1つまでです。併用を認めるかどうかは規程を作る側の設計事項で、指針はこれを望ましいとしています。

既存の制度を措置として使うこともできます。3歳未満を対象とする短時間勤務制度を小学校就学前まで延長し、1つの措置として位置づけること自体は可能です。ただし短時間勤務は5つのうちの1つにすぎず、それだけでは要件を満たしません。別の措置をもう1つ以上用意する必要があります。

措置の選択と意見聴取

見落としやすいのが、事業主が講ずる措置を選択する際に、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があるという点です。

候補や条文案をあらかじめ検討しておくことは差し支えありませんが、どの措置を採用するかを最終的に決める前に、意見を聴く機会を設ける必要があります。改定のスケジュールを引く際は、この工程を織り込むことになります。なお求められているのは意見聴取であって、合意や同意までは要件ではありません。もっとも、聴取した意見と異なる措置を選ぶ場合は、判断の理由を説明するといった対応が望まれます。

選択にあたっては、自社の職場のニーズを把握したうえで判断することが求められています。テレワークになじまない業務が中心の職場でテレワーク等を選んでも、実際には使われません。制度が形式的に2つ揃っているかではなく、対象となる労働者が実際に選べるかどうかが問われます。

個別周知と意向聴取

10月施行分では、労働者への働きかけについて2つの義務が加わります。名称が似ているため、社内の運用ルールを作る際は分けて整理する必要があります。

柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知・意向確認は、3歳未満の子を養育する労働者に対し、子が3歳になるまでの適切な時期(原則として、子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの1年間)に、事業主が選択した制度を周知し、利用の意向を確認するものです。前節の措置とセットになっています。

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮は、対象も時期も異なります。本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった時と、子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた両立に関する意向を個別に聴取します。そのうえで、聴取した労働者の就業条件を定めるにあたって、自社の状況に応じて意向に配慮することが求められます。

聴取すべき事項は、始業・終業の時刻、就業の場所、両立支援制度等の利用期間、その他両立に資する就業に関する条件と定められています。聴いた希望どおりの措置を必ず講じる義務まではありませんが、就業条件を定める際にその意向を踏まえて検討すること自体は義務です。何を聴き、何を検討し、どう対応したかを記録に残す運用が、実質的な担保になります。

規程に落とすときの論点

養育両立支援休暇を選ぶ場合、規程で定めるべき事項が最も多くなります。年10日以上とし、原則として時間単位で取得できる制度にする必要があります。時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者を対象から外すには、労使協定の締結が要ります(この場合も1日単位での取得はできます)。このほか、有給とするか無給とするか、申出の手続、既存の年次有給休暇や子の看護等休暇との関係を定めておかないと、運用時に取扱いが分かれます。

テレワーク等を選ぶ場合も、月10日以上に加えて、始業時刻から、または終業時刻まで連続する形で時間単位で利用できる設計が必要です。始業時刻等の変更やテレワークでは、既存のフレックスタイム制やテレワーク規程との重複を確認することになります。全社向けの制度が既にあるなら、育児のための措置としてどこまでを保障するのかを書き分けなければ、権利として使えるのかが不明確になります。

  • どの2つ以上を選ぶか、職場のニーズを踏まえて決めたか
  • 選択について過半数組合等からの意見聴取の機会を設けたか
  • 就業規則・育児介護休業規程・テレワーク規程などに、選択した措置の内容・対象者・申出手続を整合的に定めたか
  • 養育両立支援休暇を選ぶ場合、日数・賃金・時間単位取得・他の休暇との関係を定めたか
  • 個別周知・意向確認と、意向聴取・配慮の運用フローを分けて定めたか
  • 意向聴取の内容と対応の検討経過を記録する仕組みがあるか
※本記事は改正の概要を整理したものです。就業規則の変更手続や個別の運用については、実際の職場の状況に応じた検討が必要になります。

法務デューデリジェンスでの扱い

社内規程の整備状況は、M&Aの法務デューデリジェンスにおける確認項目の一つです。育児介護休業規程は法改正の頻度が高く、改定が追いついていない例は珍しくありません。当事務所がデューデリジェンスを担当する案件でも、旧法のままの規程や、改正を反映しないまま運用している状態を確認することが少なくありません。

確認されるのは規程の文言だけではありません。周知の状況、申出手続、意向聴取の記録といった運用の側も対象になります。すべての対応について特定の書面を残すことまでが義務づけられているわけではありませんが、面談記録・交付書面・メール・検討結果が何もなければ、義務の履行状況を買手に説明することは難しくなります

不備の内容と重要性によっては、是正対応、表明保証や補償の対象、誓約事項、クロージング前の対応事項といった形で、買収契約上の交渉に影響します。売却の予定がなくても、規程と記録が揃っている状態は、いずれ外部から検証される場面で効いてきます。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、規程・ポリシー整備において、育児介護休業規程を含む社内規程の改定に対応しています。法改正の反映だけでなく、既存の制度との重なりを整理し、運用に落とし込める形にすることを重視しています。制度設計の選択肢や記録の残し方の検討は、法務コンサルティングとして承ります。

M&A支援では、法務デューデリジェンスにおいて労務関連の規程と運用状況を確認しています。売主側で事前に整備しておきたい場合の対応も扱っています。

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