ロジットパートナーズ法律会計事務所

2024年12月17日

事業者向けオンラインサービスの料金表示と解約条項

目次

事業者向けのサービスであっても、契約の相手方が個人である場合には、その契約が事業のためのものか、私的な利用のためのものかによって、特定商取引法や消費者契約法の適用関係が変わります。個人事業主という属性だけで適用の有無が決まるわけではありません。

特定商取引法の通信販売の規定が適用される場合、インターネット上の画面で申込みを受けるときは、最終確認画面に法定事項を表示する義務が生じます。解約や返金、損害賠償の上限を定める条項には、消費者契約法による制約がかかります。

適用の有無

特定商取引法第26条第1項第1号は、申込みをした者や購入者が営業のために、または営業として締結する契約を適用除外としています。これだけを読むと、事業者向けのサービスには通信販売の規定が及ばないように見えます。もっとも、消費者庁の逐条解説は、相手方が事業者や法人であることだけで一律に適用除外とはならないと説明しています。

ただし、本号の趣旨は、契約の目的・内容が営業のためのものである場合に本章の規定が適用されないという趣旨であって、契約の相手方の属性が事業者や法人である場合を一律に適用除外とするものではない。例えば、一見事業者名で契約を行っていても、購入商品や役務が、事業用というよりも主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合は、原則として本章の規定は適用される。特に実質的に廃業していたり、事業実態がほとんどない零細事業者の場合には、本章の規定が適用される可能性が高い。

出典: 消費者庁「特定商取引に関する法律・解説(令和4年6月1日時点版)」第26条解説

適用の有無は相手方の属性ではなく契約の目的と内容で判断するため、開業準備中の個人や副業として利用する個人の申込みは、適用除外に当たらないことがあります。

消費者契約法第2条第1項も、「消費者」を個人とし、事業として、または事業のために契約の当事者となる場合を除くと定めています。条文の言葉は特定商取引法の「営業のために若しくは営業として」とは異なります。いずれも相手方の肩書だけでなく、その契約の目的と実態によって適用関係が変わる点は共通しています。法人は消費者になりませんが、個人は契約の目的によって消費者にも事業者にもなります。

申込時に個人が消費者と事業者のどちらに当たるかは実務上判別できないため、両法の適用を前提に画面と規約を作っておくほうが、後から個別に切り分けるより確実です。

特定商取引法による表示義務

最終確認画面に表示する事項

特定商取引法第12条の6第1項は、申込みの最終確認画面への表示事項として、同項第1号に分量、第2号に第11条第1号から第5号までに掲げる事項を定めています。

項目根拠
分量12条の6第1項1号
販売価格・対価11条1号
支払時期・方法11条2号
提供時期11条3号
申込期間11条4号(定めがある場合)
撤回・解除11条5号
表1:最終確認画面に表示する事項(特定商取引法第12条の6第1項および第11条をもとに当事務所作成)

同条第2項は、申込みとなることについて誤認させる表示と、これらの事項について誤認させる表示を禁止しています。表示が抜けている場合だけでなく、誤認させる表示をした場合も規制の対象です。

サブスクリプション特有の表示

消費者庁のガイドラインは、継続的な契約の表示事項について具体的な解釈を示しています。消費者から解約通知がない限り自動的に更新される契約では、その実態に即した分量を表示する必要があるとされています。自動更新のある契約では、その旨も加えて表示することが求められます。

無料期間から有償契約へ自動的に移行する場合は、移行の時期と支払うことになる金額を、申込みの前に示しておく必要があります。

サブスクリプションにおいて見受けられるような、無償又は割引価格で利用できる期間を経て当該期間経過後に有償又は通常価格の契約内容に自動的に移行するような場合には、有償契約又は通常価格への移行時期及びその支払うこととなる金額が明確に把握できるようにあらかじめ表示する必要がある。

出典: 消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」

解約の窓口を絞る設計は表示の問題にも関わり、ガイドラインは、電話による解約を受け付ける場合に確実につながる電話番号を掲載しておく必要があるとしています。

消費者契約法による条項の制約

中途解約と違約金

消費者契約法第9条第1項第1号により、解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項は、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。年額プランの前払料金を中途解約時に返さない設計も、未提供期間に相当する額の不返還が実質的に解除に伴う違約金等に当たる場合には、この規定に照らして見ることになります。

無効になるのは平均的な損害を超える部分であり、不返還の定めが丸ごと無効になるわけではありません。消費者庁の逐条解説は、平均的な損害の額を、同一事業者が締結する多数の同種契約について類型的に考察して算定される平均値であるとし、当該業種における業界の水準を指すものではないとしています。自社の同種契約から算定することになります。条文が「解除の事由、時期等の区分に応じ」としているため、解約の時期で区分を設けた場合には、その区分ごとに比較されます。

学納金の不返還特約が争われた最高裁判所平成18年11月27日判決(民集60巻9号3437頁)は、入学金を大学に入学し得る地位等を取得する対価としました。そのため、入学を辞退しても入学金の返還を求めることはできないとしました。同判決は、平均的な損害を超えることの主張立証責任が、基本的には消費者の側にあるとも述べています。もっとも、入学金についての判断は在学契約という特有の契約構造を前提にしたものです。対価として受け取った部分は別扱いになるという一般論として、そのまま他の契約に当てはめられるものではありません。

なお、同法第9条第2項は、事業者が違約金等の支払を請求する際に消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定または違約金の算定根拠の概要を説明するよう努めなければならないとしています。主張立証責任とは別に、算定根拠を説明する努力義務が置かれています。

自動更新の条項

同法第10条により、任意規定が適用される場合と比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項のうち、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効になります。同条は冒頭で、消費者の不作為をもって新たな契約の申込みや承諾の意思表示をしたものとみなす条項を、この権利制限・義務加重に当たる条項の例として挙げています。自動更新の条項そのものが直ちに無効になるわけではありません。条項の内容、更新と解約の条件、契約締結時の表示といった事情を踏まえて、同条の要件を満たすかを検討することになります。

免責条項の限界

同法第8条第1項は、事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項を無効としています。故意または重大な過失による場合の責任の一部を免除する条項や、責任の有無や限度を事業者が決定できるとする条項も同様です。

同条第3項により、軽過失による場合に責任の一部を免除する条項は、重大な過失を除く過失にのみ適用されることを明らかにしていなければ無効とされます。損害賠償の上限額を定める条項を置くときは、適用範囲をこの形で書き分けているかを確認することになります。

ロジットパートナーズ法律会計事務所のサービス

当事務所では、契約書作成・レビューにおいて、利用規約や料金プランの条項の検討に対応しています。申込画面の表示や解約の導線を法令に合わせて整える作業も扱っています(規程・ポリシー整備)。新規サービスの立ち上げに伴う設計の検討も、あわせて扱います(新規事業推進)。

まずはご相談ください

ご相談内容をお聞きし、最適なサービスをご提案いたします。

お問合せはこちら