ロジットパートナーズ法律会計事務所

2025年2月19日

自社サービスの利用規約と定型約款

目次

オンラインで多数の利用者に同じ条件でサービスを提供する取引では、利用規約が民法上の定型約款に当たることが多くあります。定型約款に当たれば、民法第548条の2から第548条の4までの規定が及びます。

草案の段階では規約に何を書くかをまず検討しますが、条項が契約の内容になるか、後から変更できるかは、条項の内容だけでなく、申込画面の作り方や変更時の手続にも左右されます。条文の体裁が整っていても、この手当てを欠くと、条項が契約の内容にならなかったり、変更が効力を生じなかったりします。

参考記事: 事業者向けオンラインサービスの料金表示と解約条項(2024年12月17日)

定型約款への該当性(第548条の2第1項)

民法第548条の2第1項は、定型約款を、定型取引において契約の内容とすることを目的として特定の者により準備された条項の総体と定めています。前提となる定型取引は、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいいます。

オンラインサービスの利用規約は、通常この定義に当てはまります。経済産業省の電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和7年2月12日)は、定型取引に当たる例として、デジタルプラットフォームの利用、不特定多数の利用者向けのパッケージソフトウェアのライセンス購入、クラウドストレージサービスの利用、通信サービスを挙げています。これらは、契約の相手方が事業者であるかどうかを問わず、原則として定型取引の要件を満たすとされており、事業者向けのサービスだから定型約款の規定は及ばない、という整理はできません。

もっとも、画一的な契約書を使っていれば定型取引になるわけでもありません。準則は、長期的な下請取引に関する契約やフランチャイズ契約を挙げ、いずれも定型取引には該当しないとしています。相手方の個性に着目した取引であって不特定多数を相手方とするものではなく、画一的であることが下請事業者やFC加盟事業者にとって合理的ともいえないためです。事実上の力関係によって契約内容が画一化していることは、定型取引該当性を基礎づけません。交渉のたたき台として用意した契約書案も、定型約款ではありません。

該当するかどうかを当事者の合意で決めることはできず、該当する前提で条項と手続を設計することになります。準則は、利用規約を定型約款としない旨の合意があったとしても、客観的に見て要件が充足される場合には定型約款として扱われる、としています。

定型約款に当たる場合、規約には次の3つの規律が及びます。

場面根拠手当てを欠いた場合
組入れ第548条の2条項が契約の内容にならない
内容の表示第548条の3締結前の拒絶でみなし合意が及ばない
変更第548条の4変更が効力を生じない
表1:定型約款に及ぶ民法上の規律(民法第548条の2から第548条の4までをもとに当事務所作成)

契約内容への組入れ(第548条の2)

民法第548条の2第1項は、定型取引を行うことの合意をした者について、個別の条項にも合意をしたものとみなす場合を2つ定めています。定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、及び、定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときです。利用者が規約の中身を読んでいなくても、条項は契約の内容になります。

申込画面の作り方はどちらの経路をとるかで変わり、規約の末尾に同意のチェックボックスを置き、チェックを入れなければ申込みに進めない作りは、前者の合意に当たります。申込みボタンの近くに、規約を契約の内容とする旨を表示する作りは後者に当たります。

後者の表示は、サイトのどこかに規約を掲げておけば足りるものではありません。

しかし、この表示は、取引を実際に行おうとする際に相手方に対して個別に面前で示されていなければならず、定型約款準備者のウェブサイトなどで一般的にその旨を公表しているだけでは足りない。
出典: 経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」29頁

会員登録を伴うサービスでは、登録後の個別の取引ごとには規約が表示されないことがあり、準則は、この場合の会員契約を個別取引の基本契約と位置づけています。会員契約を締結する際に、規約を個別取引の契約内容とすることについて要件を満たしていれば、会員契約の効力として個別取引にも規約が及びます。登録画面の作り方は、その後の取引全体に影響します。

規約の本体以外の文書を契約の内容に取り込むときは、引用の仕方に注意が必要です。準則は、「本サービスのガイドラインは本サイト利用規約の一部を構成するものとします。」のように被引用文書を具体的に特定して引用していれば、その文書も定型約款の一部を構成するとしています。一方、「当社が作成したルールは本規約の一部を構成するものとします。」のように被引用文書を明確に特定していない場合には、定型約款の一部を構成するものとはいえないとしています。準則は、取引に必要不可欠な内容を定める文書であって、ウェブサイトに分かりやすく掲載され、利用者が内容を確認したうえで取引していると推認できるものも、定型約款の一部を構成するとしています。もっとも、ヘルプページやFAQに返品や課金の条件を書いているのであれば、推認に委ねず、規約の側で文書を名指ししておきます。

組入れの要件を満たしても、すべての条項が契約の内容になるわけではありません。同条第2項は、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項のうち、定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものを、合意しなかったものとみなすと定めています。準則は、排除されるものに、過大な不利益を与える条項だけでなく、相手方が合理的に予測し得ない事項に関する不意打ち条項も含まれるとしています。

内容の表示請求(第548条の3)

民法第548条の3第1項は、契約締結の前又は締結後相当の期間内に相手方から請求があった場合、定型約款準備者は遅滞なく相当な方法で定型約款の内容を示さなければならないと定めています。既に定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りではありません。

注文画面に規約へのリンクを置くことは、ここでいう電磁的記録の提供には当たりません。

そのため、取引の際に注文画面となるウェブページ上にサイト利用規約へのリンクを張ってあるだけでは、民法第548条の3第1項ただし書にいう電磁的記録によって定型約款を提供したとはいえないので、相手方からの開示請求があれば、それに応じなければならない。
出典: 経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」31頁

準則は、ただし書に当たるには、相手方がそのデータを管理し、自由に内容を確認できる態様である必要があるとしています。規約の内容を記録した媒体の提供や、電子メールによるデータの提供が例に挙げられていますが、規約を掲載したページのURLを電子メールで知らせるだけでは足りません。

請求を拒んだ場合の効果は、契約締結の前後で異なります。一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合を除き、締結前の請求を拒むと、同条第2項により第548条の2の規定が適用されず、みなし合意によって規約を契約の内容とすることはできません。影響は個別の条項の有効性ではなく、規約全体の組入れに及びます。締結後の拒絶について準則は、明文の規定はないものの、相手方は強制履行、債務不履行による損害賠償請求、解除をなし得るとしています。

開示請求は多くの場合、問合せ窓口に届きます。準則は、請求への対応として、書面を現実に開示する方法のほか、規約を掲載したウェブページを案内する方法も挙げているので、規約を常時ウェブサイトに掲載していれば、応じること自体は難しくありません。あらかじめリンクを表示していたことで請求に応じる義務がなくなるわけではない、という点を応対の手順に入れておきます。

規約の変更(第548条の4)

民法第548条の4第1項は、個別に相手方と合意することなく契約の内容を変更できる場合を2つ定めています。第1号による変更は、相手方の一般の利益に適合するときに認められます。第2号による変更は、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときに認められます。

第1号は、利用料の減額やサービス内容の拡充のように、客観的に見て相手方全員の利益に適合する変更に限られます。一部の利用者に有利であるだけでは足りないため、値上げのように負担が増える変更は第2号に基づいて判断します。

準則は第2号について、合理的と判断されやすい例として、不正行為や迷惑行為を禁止する条項の追加、旧式化した又は脆弱性が判明したデバイスやOSへの対応の中止を挙げています。料金引上げ、利用者が希望しない有償サービスの追加と利用の強制、従前は第三者に提供していなかった個人情報を提供できるようにする変更は、合理的でないと判断されやすい例に挙げられています。変更を望まない利用者が違約金などのペナルティなく解除できることは、合理性を肯定する方向で考慮されます。

変更条項を置くことは変更の要件ではありませんが、第2号の考慮要素に含まれます。準則は、変更の対象や要件などを具体的に定めた変更条項に従った変更であることは、有利な事情として考慮されるとしています。一方で、変更条項それ自体は民法第548条の2第2項の適用対象であり、同項によって合意したとみなされない場合には、その変更条項は考慮されないとしています。

第1項のいずれの場合にも、周知の義務がかかります。

定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
出典: 民法第548条の4第2項

第548条の4による定型約款の変更に当たる限り、周知義務の有無は変更の重要性によって区別されません。「重要な変更については事前に周知する」と定める規約でも、その条項どおりに重要な変更だけを周知する運用では足りないため、条項も周知の対象を限定しない書き方にしておきます。さらに同条第3項は、第1項第2号による変更について、効力発生時期が到来するまでに周知をしなければ効力を生じないと定めています。第2号による変更では、周知は義務であるだけでなく効力の要件でもあります。

変更後にサービスを利用した場合に変更へ同意したものとみなす、という条項も置かれることがあります。準則は、この種の条項の効力がそのまま認められることはない、としています。

よって、「サイト利用規約の変更後に本サイトを利用したら、変更に同意したものとみなす」旨の条項は定型約款の同意に基づかない一方的な変更に関する条項であり、サイト利用規約の変更後に相手方がデジタルプラットフォームを利用した場合であっても、当該変更が民法548条の4に定める定型約款変更の要件を満たさない限りは、このようなみなし同意条項に基づき当該変更を有効とすることはできないと考えられる。
出典: 経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」36頁

準則は、変更後に利用を続けたことから変更への同意を推認することはできない、と説明しています。利用者は、変更前の規約を組み込んで成立した契約の有効期間中は、その契約に基づいてサービスを利用する権利があるためです。個別に合意して契約の条項を変更すること自体は否定されませんが、利用を継続したというだけでは、変更への同意を推認できません。

同条第4項は、民法第548条の2第2項を変更には適用しないと定めています。準則は、その理由として、変更の有効性についての審査が同項によるものと比してより厳格であり、考慮要素も異なることを挙げています。第548条の2第2項で排除されない条項であれば変更も認められる、という関係にはありません。

変更条項の書き方

変更条項に置く事項は、以上の規律を踏まえて次のように整理できます。

  • 変更しうる事項と変更の事由を、具体的に定める
  • 変更する旨・変更後の内容・効力発生時期を周知すること、及びその方法(サービス内の表示、電子メール等)を定める
  • 変更の内容に応じて、周知から効力発生までの期間を確保する
  • 変更を望まない利用者の解除権など、不利益を軽減する措置を検討する

このうち法律が義務づけているのは周知(第548条の4第2項)で、条文は周知から効力発生までの期間を定めていません。残りは、第1項第2号の合理性の判断で有利に働く材料です。

周知の方法は、規約に書いたとおりに運用できるものを選びます。電子メールによる周知を定めながら、全利用者へ一斉に送る仕組みがない、という状態にしないためです。

消費者契約法・個人情報保護法との関係

利用者に消費者が含まれる場合は、消費者契約法の制約が重なり、変更条項は同法第10条による無効の対象にもなります。同条は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。個人向けにも提供するサービスでは、契約の目的が事業のためかどうかで同法の適用が分かれます。料金や解約に関する条項の制約は、事業者向けオンラインサービスの料金表示と解約条項で扱いました。

個人情報保護法上の本人同意が必要な場合、規約を契約の内容とすることへの同意だけでは、その同意が得られたことになりません。準則は、規約に定める個人情報の取扱いのルールにも、私法上の契約としては定型約款の規定が適用されるとしています。もっとも、個人情報保護法第18条が定める利用目的の達成に必要な範囲を超えた取扱いについての同意や、同法第27条に基づく第三者提供の同意は、公法上の要求であって私法上の同意ではありません。準則は、規約を契約の内容とすることに合意したというだけでは、これらの同意がなされたとみなすことはできない、と整理しています。本人同意が必要な事項については、同意の対象を利用者が認識したうえで意思表示できる形を、規約の組入れとは別に設計することになります。

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当事務所では、契約書作成・レビューにおいて、利用規約の条項の検討に対応しています。申込画面での組入れの手当てや、規約を変更する際の周知の手順も、あわせて扱います(規程・ポリシー整備)。

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